PR施設での説明にもVRスコープを活用する。写真は美浜原子力PRセンター2階
PR施設での説明にもVRスコープを活用する。写真は美浜原子力PRセンター2階

 関西電力は、原子力発電所の仕組みや安全対策などをよりリアルに知ってもらおうと、VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)映像を活用した見学会を実施している。通常一般の見学では入れない場所にある原子炉や蒸気発生器、タービンなどを疑似的に視覚体験できる。原子力発電所構内をバスで巡る見学会だけでなく、PRセンターでの説明にもVRを活用する。

 立地地域の住民を対象にした発電所見学会などに力を入れている関西電力は2017年8月、バス車中の一般見学ルートでは入ることができない施設や設備も見てみたいという参加者の要望に応え、国内で初めて、大飯発電所の見学用にVRを導入した。携帯端末を組み込んだVRスコープで、原子炉など設備のCG映像を見るというもので好評を得ていた。これを受けて、美浜発電所でも見学会にVRを導入することにした。

 美浜発電所の見学会では約20分のPR施設での説明、約40分のバスによる構内見学を想定。VRスコープは、解像度の高いタイプを採用し、めがね着用者でも装着できる横幅とした。映像は実写を駆使し、ドローンによる空撮をはじめ、上下左右360度対応の動画や画像を使用する。

 発電所の全体像を扱う映像では、原子炉建屋やタービン建屋の中の様子をはじめ、使用済み燃料プールのほか、津波対策など安全性向上対策を実施する設備などが見られる。防潮堤では所員も登場させ、その高さを感じられるようにした。タービンが駆動する様子では、その音を出力する工夫も施している。また、現在進行中の廃止措置の説明も盛り込んだ。

 1月20日からの美浜発電所における本格運用に先立ち、関西電力は、協力会社の社員9人をモニターとする見学会を実施し、報道陣に公開した。

 参加者からは、実写の迫力や鮮明な映像に驚きの声が上がった。「映像がとてもきれい。ドローンの上から俯瞰(ふかん)した映像は、これまで見たことがなく新鮮だった」という感想のほか、実際に発電所内で作業することも多いという参加者からは「リアルな映像をぜひ一度見てもらいたい。具体的なイメージができるようになるのでは」との声が聞かれた。

 美浜発電所では、VRスコープ100台、タブレット端末10台を配備。PR施設にも常設し、見学会参加者だけでなく、来館者も利用できるようにしているという。

電気新聞2018年1月19日