開設から1年、商習慣革新へ手応え
昭和電線ホールディングス(HD)の電線・電材EC(電子商取引)サイト「蛙屋(かえるや)」が、10月で開設から1年を迎えた。電話やFAXに受発注を頼る電線業界に対し、新たな選択肢として誕生したサイトだ。産業用電線、通信線をはじめとする同社グループの製品を網羅し、取り扱い製品や掲載情報を拡充するなど改良を重ねてきた。アクセス数は順調に伸びており、商習慣の革新に向けて成果が現れ始めている。(矢部八千穂)
電線業界では現在も、電線・電材をはじめとした製品の受発注は電話やFAXでのやりとりが中心だ。蛙屋はこうした商習慣を転換し、デジタル化が加速する社会の潮流に即した販売手法を確立することを目的に、大手電線メーカーが手掛ける初のECサイトとして設立された。管理・運営はグループの商社であるSDS(川崎市、不二木哲社長)が担う。
蛙屋では電線や通信線のほか、端子、工具、免震機器といった昭和電線グループの製品を幅広く取り扱う。グループ以外の製品も掲載。総数は開設時の約2千点から大幅に増え、現在では約3200点に上る。
顧客にとっては、24時間好きなタイミングで発注できるほか、従来は問い合わせが必要だった在庫状況も一目で分かることなどがメリットだ。掲載情報やデザインにも気を配っている。大手電線メーカーならではのサイトとして技術資料を充実させるとともに、性能を一覧表にするなどプロが求める情報を見やすく整理している。
運営を続ける中で、サイトの改良も行ってきた。販売製品の拡充に加え、製品の使用方法を紹介する記事や施工動画の掲載なども始めた。ツイッターに蛙屋の公式アカウントを開設し、毎日の投稿を通じて認知度向上も図っている。
蛙屋は、昭和電線HDの現中期経営計画の最終年度である2026年度までに3億円の売上高目標を掲げる。同社経営戦略企画部の西塚宗浩・EC推進グループ長は、現状の売上高については厳しい認識を示す一方で、目標達成の土台となるアクセス数は「順調に伸びており、目標値を毎回達成している」と手応えを話す。
昭和電線HDは、売上高目標の達成には月間30万アクセスが必要と試算。アクセス数を増やすため、販売製品を5千~6千点まで拡大させる計画だ。
また、立ち上げから1年が経過し、顧客データの蓄積も進んできたことにより、製品への関心度、必要とされる技術情報などがデータで把握できるようになってきたという。改良の継続や製品の拡充と同時に、こうしたデータを生かした改善にも取り組み、アクセス数や売り上げの増加を確実なものとしていきたい考えだ。
電気新聞2022年10月17日