1月16日に再開された総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会
1月16日に再開された総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会

 経済産業省は1月16日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス事業分科会に設置された原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)を再開し、原子力を巡る課題の検討に着手した。事務局の資源エネルギー庁は、東京電力福島第一原子力発電所事故からの信頼回復を最優先課題に掲げ、電気料金の上昇のほか、核燃料サイクル・使用済み燃料対策や立地支援などを検討テーマに掲げた。

 エネ庁は、まず2030年度の電源構成(エネルギーミックス)で示した原子力比率「20~22%」の達成に向けた原子力政策の方向性を整理。最優先課題には社会的信頼の獲得を挙げ、福島第一原子力発電所の汚染水・廃炉対策の進捗状況を説明した。

 原子力の長期停止による影響として、電気料金の上昇を指摘。東日本大震災以降、火力のたき増しや再生可能エネルギー賦課金などにより、一時大きく上昇し、現在は原油価格の下落などがあるものの、震災前に比べて家庭向けが10%、産業向けで14%程度の上昇となっている。電力由来の年間温室効果ガス排出量も10年度に比べ7900万トン増えているとした。

 安全性向上を巡っては、事業者の新規制基準への対応に加え、電気事業連合会で検討が進められている業界横断的に安全性を高めるための組織・機能の在り方も検討課題に据えた。バックエンド対策では事業者全体で「20年頃に4千トン」の貯蔵対策を目指すとする「使用済み燃料対策推進計画」にも言及した。

 さらに、長期停止の影響を立地地域が受けている点も強調。交付金など適切な電源立地対策を講じることで、電気を大量消費する地域が享受する利益を、立地地域へ還元する必要性をあらためて訴えた。

 エネ庁の村瀬佳史・電力・ガス事業部長は「原子力には多岐にわたる重い課題が山積している。一つ一つ熟議頂き、着実に答えを出して取り組みを進めていく」と述べた。

 原子力小委は、エネルギー基本計画に定められた原子力分野の方針の具体化を目的に、14年6月に新設され、同年12月には福島第一事故の教訓や原子力の依存度低減、バックエンド対策といった項目を中心に中間取りまとめを行った。開催は約2年半ぶり。

電気新聞2018年1月17日