事業継続か撤退か、苦境続く

 
 新電力の撤退が続いている。F―Power(Fパワー)から電力小売事業を譲り受けたFPS(東京都港区、洞洋平代表取締役)が9月21日に低圧部門で事業撤退すると明かし、自然電力(福岡市、代表取締役=磯野謙氏、川戸健司氏、長谷川雅也氏)も今月4日に電力小売事業から全面的に撤退すると公表した。自然電力は上限・下限付きの市場連動型プランで供給を続けていたが、事業継続が難しくなった。経営状態の悪い新電力は冬の需要期を前に、事業を継続するかどうか決断を迫られている。

 FPSはGLPグループ傘下の新電力。4月から、倒産したFパワーの電力小売事業を引き継いで家庭向け電力小売サービス「ピタでん」などを提供していた。月間使用量500キロワット時までは従量料金がかからない「使いたい放題プラン」といった個性的なプランを手掛けてきたが、低圧の電力供給は12月20日で終了するとしている。高圧・特別高圧については事業を継続する方針だ。
 

続く「逆ざや」

 
 自然電力は2017年から電力小売サービス「自然電力のでんき」を提供してきた。実質再生可能エネルギー電力の比率を3%、30%、100%の3種類から選べる仕組みを採用。料金体系は上限・下限市場連動型プランで、1キロワット時当たり5~20円の「調達費用分価格」に、事業運営費、託送料金、環境価値調達費用分価格などを上乗せして請求していた。

 しかし卸電力市場価格の慢性的な高騰で、上限価格を超える状況が続いた。8月分からは調達費用分価格の上限を50円に引き上げて供給。8月1日~10月5日は、システムプライスが50円を超えるコマが約200コマあった。同社は4月から新規申し込み受け付けを停止しており、11月末で既存顧客への電力供給を終了するとしている。

 8月末で電力小売事業を停止していた石川電力(金沢市、小田柿陽介代表)は、4日までに破産手続きの準備に入った。同社は16年の設立で、飲食店といった小規模店舗などを中心に契約者数を伸ばしてきたが、21年10月以降は逆ざやが続く赤字運営となっていた。顧客には伊藤忠エネクス子会社のエネクスライフサービスなどに契約を切り替えるよう促している。

 帝国データバンクによると、石川電力の負債は約2億円と見込まれている。22年に倒産した新電力は、ホープエナジー、アンフィニ、郡上エネルギー、ISエナジー、FTエナジーに続き6社目になるとみられる。エルピオやウエスト電力など、電力小売事業から撤退した新電力も続出している。

 5月の新電力販売量ランキングで、FPSは総合48位(低圧64位、高圧34位、特別高圧40位)、自然電力は総合214位(低圧135位、高圧279位)、石川電力は総合331位(低圧190位)だった。
 

早期の通知を

 
 昨冬は電力供給の停止日時直前に、事業撤退を通知する事業者も見受けられた。電力小売事業から撤退する場合は需要家が余裕を持って契約を切り替えられるように、電力供給停止よりもなるべく早いタイミングで事業撤退を通知することが求められる。(旭泰世)

電気新聞2022年10月6日