電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合(座長=武田邦宣・大阪大学大学院教授)は30日、小売電気事業者の登録審査時に事業計画の提出を求めることでおおむね一致した。これまでの審査は短期に焦点を当ててきたが、中期的な事業継続性を申請者に求める。また、事業開始後も資金概況などの報告を求め、国がモニタリングすることで、事業者のセルフチェックのきっかけとする。経営が悪化した際の一般送配電事業者による託送解約の進め方などは、今後方向性を示す。

 小売電気事業者の撤退増による社会的負担の抑制、需要家保護を図るため、「事業開始時」「事業開始後」「事業撤退時」の3段階に分けて対策の方向性を整理した。

 事業開始時は、小売登録審査の強化で対応する。これまでは短期間に事業継続が困難にならないかを審査してきたが、今後は資金見通しを含めた事業計画の提出を求める。計画策定プロセスを通じ、市場リスク分析やリスク管理体制構築を申請者に促す。その際、先物取引でヘッジされていない比率を一定の割合以下とするなど、KPI(重要業績評価指標)の設定も求める方向だ。

 事業開始後は、現預金の残高といった資金概況などを国に報告するように求めて、小売電気事業者に経営状況のセルフチェックのきっかけを与える。また、そうした情報から唐突な事業撤退の予兆がみられた場合は、国による報告徴収などを活用して、需要家への影響の抑制策検討を当該小売電気事業者に求める。保証金を確保するといった社会的負担の抑制策は今後検討する。

 事業撤退時は、事業者判断による撤退と、一般送配電事業者による託送解約に伴う撤退の2パターンに分け、検討を深める。需要家のスイッチング期間確保や、託送料金の未払い増大を防ぐ。

電気新聞2022年8月31日