異常気象で慢性化予測

 
 米カリフォルニア州の独立系統運用者(ISO)であるカリフォルニアISO(CAISO)は、この夏が10年に1度の異常気象などで高需要になった場合、9月に同州で約170万キロワットの供給力不足に陥る可能性を公表した。供給力の上積みは見込めず、DR(デマンドレスポンス)など需要側の対策しか打つ手がない状況。水力発電量が平年と比べて半減するとの予測もあり、海外電力調査会の藤井良治研究員は「2020年以来の輪番停電が実施される可能性がある」と指摘する。

 CAISOは熱波や干ばつなど近年増加している異常気象を踏まえ、直近20年間の状況を基に今夏需給を分析した結果を5月に公表している。これによると、供給力が最も不足するのは、太陽光や水力発電量の減少と、太陽光などの供給分を除いた需要のピーク時が重なる9月の午後8時。CAISO幹部は、25年まで供給力不足が続くと予想しており「25年にはピーク時に依然として約180万キロワット不足する」と説明している。

 今回の評価に加えて、電力需給逼迫に至る可能性のあるリスクも提示した。山火事などによる連系線の運用停止に伴う輸入電力量の減少や、火災に伴う異常高温などを挙げた。

 米国エネルギー情報局(EIA)は、6~9月の水力発電量について、干ばつによる渇水の影響で70億キロワット時と予測。3年連続で平年の130億キロワット時を下回るが、21年6~9月の65億キロワット時よりは増加する。

 カリフォルニア州のニューサム知事は今後の供給力不足に対し、需給逼迫時に最大500万キロワットを供給する「戦略的電力信頼性予備力」の創設を決めた。6月末に承認した予算案で、同予備力の確保に22億ドルを配分。対象設備として、閉鎖が予定されているガス火力や蓄電池付き再生可能エネルギーなどが見込まれる。

 その一方で、同予備力については、ガス火力の実質的な救済につながることから「同州のカーボンニュートラル目標から遠のく」との声も出ている。脱炭素対策と慢性的な需給逼迫解消を両立する手段は限られており、ニューサム知事は難しい舵取りを迫られている。

電気新聞2022年8月17日