テレストリアル・エナジーが開発を進めるIMSRの概念図
テレストリアル・エナジーが開発を進めるIMSRの概念図

 カナダで第4世代原子炉の開発へ向けた動きが活発化している。現地新興企業の「テレストリアル・エナジー」はこのほど、溶融塩炉「IMSR」の立地点を決定。11月には同国原子力安全委員会に申請していた設計審査の第1段階が完了した。第4世代原子炉は各国が開発しているが停滞も指摘される。一方でカナダは低炭素化への手段として原子力を重視。米国の科学技術専門メディアは「カナダは第4世代原子炉の商用機の受注競争でわずかながら優位に立った」と報じている。

 第4世代原子炉は現在主流の軽水炉などの次世代型で、燃料交換の省力化や固有の安全性などを追求した様々な新型炉の総称。そのうち溶融塩炉はフッ化物塩を一次冷却剤として用いる。経済性などに優れるといわれる。

 テレストリアル・エナジーが手掛けるIMSRは電気出力19万キロワットで低濃縮ウランの固体燃料と黒鉛減速材を用いる技術。モジュール化した炉心を連続で7年使用できる。使い終わったら炉心ごと交換できる点が特長だ。

 今回通過したのは審査プロセスのごく初期で、米国メディアは「稼働開始は早くとも5~10年後」と評している。一方、初号機の建設地点は既にオンタリオ州のカナダ国立研究所内の敷地を選定している。オンタリオ州は2014年に再生可能エネルギーや原子力を主体とした電源構成により脱石炭火力を実現した「低炭素化先進州」として知られる。

 溶融塩炉は中国やオランダも国家プロジェクトとして開発を進めている。米国では新興企業が開発を進めているものの、米原子力規制委員会(NRC)へ設計認可申請を提出したケースはないという。

 米国内ではNRCの情報提供が不十分なため開発が出遅れているとの指摘も出ていた。これに対応し、16年には連邦議会が「原子力イノベーション・近代化法」を可決。次世代炉の認可を促進するためNRCに枠組み整備を求めている。

 北米ではカナダが一歩先んじたが、米エネルギー省(DOE)のペリー長官も次世代炉推進の重要性を強調しており、今後の動きが注目される。


電気新聞2017年11月28日