エネ庁が原子力技術工程表
経済産業省・資源エネルギー庁は29日、2030年代に安全性を高めた次世代軽水炉の商用運転開始を目指すとした原子力開発の技術ロードマップを示した。革新炉開発戦略の策定に向け、軽水炉や小型モジュール炉(SMR)、高速炉、高温ガス炉など各炉型に対する評価結果を提示。国内サプライチェーンの維持・強化や規制の予見性などの面から実現性が高いとして、高い安全機能を備えた次世代軽水炉の開発に最優先で取り組むべきとした。
同日の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)原子力小委員会の革新炉ワーキンググループ(WG、座長=黒崎健・京都大学複合原子力科学研究所教授)で、中間報告に向けた骨子案を提示。各炉型への評価結果と、開発に向けたロードマップを示した。
骨子案では、自然循環や圧力差による冷却などの受動的安全機能を備えた大型軽水炉を革新軽水炉と位置付けた。既存軽水炉の技術の延長線上にあることから技術成熟度が高く、国内サプライチェーンが活用可能で、規制の予見性も高いと評価。基本設計、詳細設計と同時に許認可プロセスを進め、30年代前半の建設開始、30年代中盤以降に商用炉運転開始を目指す工程表を描いた。
この他の炉型についてもロードマップを提示。軽水炉型SMRと高速炉は40年代に実証炉の運開、高温ガス炉は30年代の実証炉運開を目指す。SMRについては、先行する欧米プロジェクトへの国内サプライヤーの参画支援、高速炉や高温ガス炉については国際連携による開発推進などに取り組む。
また、開発予算の充当や規制当局との共通理解醸成、投資回収制度など、革新炉開発に向けた事業環境整備が必要だと指摘している。
運転開始などの年限を区切った開発目標提示で「現時点で新増設・リプレースを想定していない」とする政府方針との整合性が問われそうだ。エネ庁は、骨子案について「(革新炉WGでの)議題が一巡した段階での中間的な整理で、定まった結論ではない。実際の建設・立地は、地域の理解を頂きながら進めることが大前提だ」と説明した。
電気新聞2022年8月1日