一般送配電事業者10社は25日、レベニューキャップ制度開始に向けた収入見通しに関する書類を経済産業省に提出した。ネットワークコスト減など、経営効率化による費用減少を織り込んだものの、再生可能エネルギー連系量増加やレジリエンス(強靱性)向上に関する費用、調整力確保費用などが増えるため、各社の収入見通しはこれまでに比べて上昇した。それに伴い託送料金も値上げとなる想定だ。電力・ガス取引監視等委員会の専門会合は29日に査定を始める。年内をめどに作業を終える予定で、2023年4月に新制度が始まる。(3面に各社の収入見通し概要)

 レベニューキャップ制度の第1規制期間に向けたプロセスは、従来の総括原価方式に近い。各社が積み上げた費用は今後、国の査定で一定程度圧縮される方向だ。

 人件費や委託費といったOPEX(事業経費)などは、「重回帰分析」と呼ばれる統計学の手法を用い、過去5年間の全社の平均的な効率性を反映。これに加え、10社のうち上位事業者の効率性を反映するトップランナー補正などで費用を圧縮する。

 一方で、個別査定が行われる費目もある。例えば、各社が計上した再エネ拡充やレジリエンス向上に向けた次世代投資。系統安定化システムや需給予測精緻化研究などの将来に向けた投資は、国がプロジェクトごとにヒアリングを行い妥当性を評価する予定だ。 連系線・基幹系統投資も個別に査定する。

 各社の収入見通し上昇は、需給調整市場からの調整力費用増が大きく寄与した。24年度から全ての調整力を需給調整市場から調達する。燃料費高騰などを踏まえ、各社の費用が大幅に増えた。需給調整市場からの調整力調達は外生的な要因に影響を受けるが、一定の効率化を求める観点から、監視委の専門会合で事後検証費用と定義された。今後の査定プロセスでまず、見通しの適切性を国が確認した後、収入上限承認後は必要に応じて事後調整が行われる。

 10社は収入上限に関する省令が22日に公布されたことを受け、収入見通しに関する書類を経産省に提出した。実質的な収入上限の申請に当たる。年内を目途に完了する査定結果を反映した後、10社は収入上限に関する正式申請を行う。正式申請は、関連する政省令の施行後となる。収入上限承認後は既存ルールに従って託送料金を算定し、託送供給等約款を国に申請する。査定終了後の審査に大きな論点はないもよう。

 今後、経産省・資源エネルギー庁が書類を監視委に送付する。28日の監視委会合で査定開始を決定した後、29日に料金制度専門会合を開き、作業を始める予定だ。まずは2回に分けて5社ずつ収入の見通しを説明する機会を設ける。その後、3回目で国が査定の重点項目などを示し、プロセスが本格化する予定だ。

電気新聞2022年7月26日