大手電力各社が料金見直しに向けた検討を本格化させている。現行料金の前提条件と足元の経済環境の間に、経営努力では埋めきれない差が生じているためだ。特に円安による燃料調達コストの増加が各社の経営を揺さぶる。自由料金では、燃料費調整制度に基づく調整上限を撤廃する動きが相次いでいるが、低圧規制料金について政府は「引き続き検討」すべき課題と整理。電気事業者からは、燃調の基準燃料価格を機動的に見直せるような仕組みづくりを求める声が上がる。

 電気料金は、原価算定期間内の販売電力量や原油価格、為替レート、原子力利用率などの前提諸元を基に導く。諸元を設定した当時と現在とでは国内外の経済環境は大きく異なるが、その変化をスピーディーに反映できる仕組みではない。

 昨秋以降、天然ガスや一般炭の価格は高止まり傾向にあったが、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻は資源燃料価格の押し上げ材料になった。

 さらに、為替レートは各社が設定する諸元との差が広がる。東日本大震災を受けて保有する原子力発電所が停止し、代替火力のたき増しを迫られた各社は、燃料費増加を主因に値上げを申請。算定期間が2012~14年度の東京は1ドル=78.5円、13~15年度の北海道、東北、四国は1ドル=80円台と設定し燃料費を見積もったが、足元では135円台半ばで推移。前提諸元との差が際立っている。

 算定期間中の諸元は、燃調の基準燃料価格の前提でもある。為替変動などの影響は一定程度、燃調で回収できるが、規制料金は現状、調整上限を撤廃できない。電力小売政策を検討してきた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会が今月了承した中間取りまとめ案では、規制料金と燃調の扱いについて「経過措置料金(規制料金)そのものの在り方も含め、引き続き検討する」と整理。撤廃を見送った。

 電気事業連合会の池辺和弘会長は7月の定例会見で、基準燃料価格比1.5倍という上限を見直したり、基準燃料価格を足元の状況に即して機動的に見直したりするなどのルール整備が必要との見解を示している。

電気新聞2022年7月29日