岸田文雄首相による今冬の原子力発電所最大9基稼働の指示を受け、萩生田光一経済産業相は15日、工事や検査期間の見直しなどで稼働数を確保する考えを示した。定期検査や特定重大事故等対処施設(特重施設)の運用開始時期などを踏まえた運転見通しを見ると、来年1月下旬から2月中旬にかけて、同時期に9基が稼働状態となる可能性がある。

 「最大9基稼働」の解釈について、経済産業省・資源エネルギー庁は、新規制基準の下で稼働した実績がない原子炉の再稼働は含んでおらず、再稼働実績がある10基のうち9基の稼働を目指すと説明。また「冬季中、ずっと(9基稼働)というわけでもない。9基が同じ時期に動いている期間があればよい」との認識を示した。

 再稼働実績のある10基の運転計画を見比べると、1月下旬の九州電力玄海原子力発電所3号機の運転再開以降、2月中旬の九州電力川内原子力発電所1号機定検入りまでの期間、稼働基数が8基と最も多く見込める。定検中に見つかった蒸気発生器(SG)伝熱管の損傷で発電再開時期が未定となっている関西電力高浜発電所3号機がこの期間に稼働していた場合、同時期に9基の稼働が実現する。

 萩生田経産相は「(9基の)決まった内訳があるわけではない」と述べたが、ある電力関係者からは「工事や定検作業の遅れによる稼働減がないようにとプレッシャーをかけられているようだ」との声も。エネ庁は事業者への支援策の可能性について「何かできることがあるか、しっかりと検討していく」と述べるにとどめた。

電気新聞2022年7月19日