日本電機工業会が発行したパンフレット「地球を照らす大きなやりがい・メーカー原子力部門の仕事」
日本電機工業会が発行したパンフレット「地球を照らす大きなやりがい・メーカー原子力部門の仕事」

 日本の優れた技術で世界を相手に働いてみませんか――。

 JEMAは、原子力分野の魅力を伝えるリクルート冊子を作成した。東芝、日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、三菱電機、富士電機の5社から若手技術者が2人ずつ登場。現在の仕事内容や今後の目標などを語っている。JEMAは電機産業への理解を深めてもらうため様々な大学などに出向き、説明会を開催している。

 昨年度は48校で開催し、約3千人の学生が参加した。こうした場所で作成したリクルート冊子を配布し、原子力分野のやりがいを発信していく考えだ。

 冊子の表題は「地球を照らす大きなやりがい・メーカー原子力部門の仕事」。この中で、「原子力発電所の開発・製造・建設・保守は幅広い分野の知識と技術が結集して成り立っている」と紹介。冊子に登場するのは入社4~8年目の若手社員で、機械工学から数学・物理学、化学、材料・エネルギー工学、土木・建築工学まで、幅広い分野から選んでいる。原子力分野の魅力のほか、大学・大学院での専攻、入社に至った経緯、将来の目標、1日のスケジュールなどを分かりやすくまとめた。巻末には、各社の人事担当者のメッセージとともにQRコードを掲載しており、新卒採用のホームページにアクセスできるようになっている。
 
>福島事故後の原子力離れ。人材確保へやりがいをアピール

 
 JEMAがこうした冊子を作成した背景には、福島事故後の「原子力離れ」がある。原子力産業の将来を不安視し、就職先として敬遠されている現状が数値でも示されている。

 多田伸雄・原子力部長はこうした現状について「原子力政策の先が見えない中では、ある程度やむを得ないところもある」と指摘する。その一方で、「このままの状況が続けば、原子力を担える人材がいなくなる。原子力の安全性を担保できなくなるほか、将来原子力が必要になった場合、技術が途切れてしまう」と危機感を示す。この状況を打破するため、今年6月に冊子を作成。原子力分野がやりがいのある仕事であることをPRし、人材の減少に歯止めをかける考えだ。

 多田部長は、原子力産業の魅力について「様々な技術を結集するため、多種多様な人たちと切磋琢磨(せっさたくま)しながら仕事ができる点」と強調する。その中で個々の専門性を高めることもできる。関連技術に触れることで、技術の幅を広げることも可能だ。科学技術だけでなく、プロジェクトマネジメントを進めるための仕組みも分かる。

 海外では、これから原子力を活用しようとする国が多い。多田部長は「エネルギー需要も増えるため、原子力が活躍する場面はもっと増えてくる」と話している。


(2017年10月26日付電気新聞掲載)