2013年7月16日に開催された第1回目の審査会合。事業者は優先度の高いプラントの申請を先行させていることもあり、申請済みのプラントは26基にとどまる。
2013年7月16日に開催された第1回目の審査会合。電気事業者は優先度の高い原子力プラントの申請を先行させているため、申請済みのプラントは26基にとどまっている

 原子力規制委員会に新規制基準適合性審査の申請を行った原子力プラントが、現在の「26基」で止まったまま2年が過ぎた。2015年11月5日に日本原子力発電が敦賀発電所2号機の審査申請を行ったのを最後に、空白期間が続いている。未申請の実用炉は計19基で、BWR(沸騰水型軽水炉)が大半を占める。規制委も未申請のままのプラントがあることに「問題意識を持っている」(更田豊志委員長)との認識を示す。

 これまで審査申請された26基のうち、新規制基準への適合を示す「審査書案」がまとめらたのは14基。直近では原電東海第二発電所の審査が実質的に終了した。このため、11基がまだ審査の途上にあり、未申請プラントはBWR15基とPWR(加圧水型軽水炉)4基だ。

 各事業者の審査申請の状況をみると、北海道電力、原電、Jパワー(電源開発)以外は、申請済みと未申請のプラントが混在しているのが特徴的だ。申請時点での設備状態や、審査対応要員の確保、申請書作成の手戻り防止などの理由から、優先度の高いプラントの申請を先行させる戦略が取られた。その上で、未申請プラントは一部を除き「準備が整い次第、申請する」とするのが各事業者の基本スタンスとなっている。
 

10基は東電HD。廃炉要望や事業再編もからみ先行きは不透明

 
 ただ、この間、BWR審査の遅れといった問題もあり、申請は2年以上の空白期間が生じている。

 未申請のBWR15基のうち、10基は東京電力ホールディングス(HD)のプラントだ。福島第二原子力発電所の4基は県議会などが廃炉を求めており、柏崎刈羽原子力発電所1~5号機は地元の柏崎市からいずれかの廃炉を求める要望が出されている。建設中の東通原子力発電所は、事業再編の対象として共同開発が志向され、審査申請以前の体制面が課題となっている。このため、審査書案がまとまった柏崎刈羽6、7号機に続く申請が出てくるかは不透明な情勢だ。

 東北電力は女川原子力発電所1、3号機、北陸電力は志賀原子力発電所1号機、中部電力は浜岡原子力発電所5号機が未申請。いずれも自社の審査中プラントの対応を優先させている状況で、新規申請に向けた具体的な動きは出ていない。

 一方、中国電力は「島根原子力発電所2号機のSs(基準地震動)が固まれば、速やかに3号機の審査を申請したい」との意向を示す。島根2号機の地震・津波関係の安全審査では、早ければあと2回の審査会合でSsを巡る議論が始まる見通し。Ssが確定すれば、国内27基目となる審査申請に踏み出す可能性が出てくる。
 

40年迫る4基。経済面で対応は慎重に

 
 PWRで未申請の4基は、関西電力大飯発電所1、2号機、四国電力伊方発電所2号機、九州電力玄海原子力発電所2号機で、いずれも営業運転開始から40年が近づく高経年化プラントだ。

 大飯1、2号機は一部報道で廃炉の検討が取り沙汰されたが、現時点で関電は審査申請の準備を行っており、技術・安全面での検討を継続中とする。四国電力は伊方2号機について再稼働の可否判断の検討を続けている。九州電力は玄海3、4号機の再稼働に向けた対応に全力を挙げており、玄海2号機の今後についてはまだ具体的な言及をしていない。各プラントとも運開40年のタイムリミットが5年以内に迫っているため、経済性などを勘案して審査を受けるかどうかの検討を慎重に行っているもようだ。
 

更田規制委員長も問題意識示す

 
 更田委員長は1日の定例会見で、審査申請の空白期間が約2年続く現状について、「廃炉を決めたわけでもなく、申請もしていないプラントを放っておいていいのか、議論の分かれるところだ」と述べ、規制当局として問題意識を持っていることを明らかにした。ただ、「安全上の重要度からすると(議論の)優先順位が非常に高いわけではない」とも述べている。このため、未申請の実用炉については、燃料を厳格に管理することなどで、設備の実態として安全が十分に保たれているかが鍵になるといえそうだ。

 
(11月9日付電気新聞に掲載)