22日公示、7月10日投開票となる参議院議員選挙に向け、主要政党の公約が16日までに出そろった。ロシアによるウクライナ侵攻などを受け、エネルギー安全保障への関心が高まっている。このため、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、与党や野党の一部では、原子力政策を見直して原子力利用を進める公約も出てきた。各党のエネルギー政策に関する公約について、原子力を中心にまとめた。

※画像クリックで拡大

 

コスト意識

 
 自民党は、エネルギー安定供給のため再エネに加え、安全が確認された原子力の最大限活用を図ると明記。2021年衆院選の公約では「可能な限り原発依存度を低減」「必要な規模を持続的に活用」など、第6次エネルギー基本計画に沿った記載だった。衆院選後、ウクライナ危機や電力需給逼迫を経験し、原子力発電の重要性が党内で再認識された。

 物価高対策で、電気・ガス料金の値上がりや、電力安定供給に万全の対応を取ると記載したことも特徴的だ。前回衆院選は、足元のエネルギーコスト上昇や電力安定供給への言及は乏しかった。

 脱炭素政策は、政府方針がおおむね踏襲された。「GX経済移行債(仮称)」で20兆円規模の政府資金を先行して確保。今後10年間で150兆円超の官民投資実現を目指す。水素・アンモニアの商用化につながる技術開発、実装に向けた支援措置を新設。カーボンプライシング(炭素の価格付け)の最大限活用に向け、ロードマップを年内に策定する。

 公明党は脱原子力の表現を一歩弱めた。「原子力に依存しない社会を目指す」との表現は残ったものの、前回衆院選の公約で示していた将来的な「原発ゼロ」方針は取り下げた。再エネ主力電源化の方針は継続し、水力発電について、25年までに12万キロワット分を新設する方針を明記した。山口那津男代表は16日の会見で、原子力の表現について「もともと原発ゼロを積極的に目指すとは言っていない。再稼働は、原子力規制委員会の規制基準を満たしたものは認めるという立場だ」と説明。新増設については「現状で難しい」とした。

 野党のうち、日本維新の会はエネルギー安全保障の観点から「安全性が確認できた原子力発電所を可能な限り速やかに再稼働する」と新たに明記。原子力人材の確保に向け、小型モジュール炉(SMR)など「次世代炉型原子炉の実用化にも取り組む」とした。水素エネルギーの研究に加え、CCS(二酸化炭素回収・貯留)や石炭ガス化発電の開発を進め、電力市場改革の見直しを図る。

 国民民主も原子力政策を転換。安全性が確認された原子力の再稼働と安定運転を図り、リプレースも進めることで、経済安全保障の確保とカーボンニュートラルの両立を支える技術やサプライチェーン、人材の維持・向上を目指す。30年代に再エネ比率40%以上とする目標や、カーボンニュートラル実現に向けた基金創設などは、引き続き盛り込んだ。
 

200兆円投入

 
 一方、立憲民主、共産、れいわ新選組は、原子力の活用に否定的な姿勢を継続。立憲民主は前回同様「リプレースも含め、原子力新増設は認めない」とし、国の管理下での廃炉実施体制の構築を新たに掲げた。自給率向上によるエネルギー安全保障の確立を図るため、50年に「再エネ電気100%」を実現。30年までに、省エネや再エネに公的資金50兆円を含む総額200兆円を投入する。

 共産は「原発ゼロ基本法」を制定し、原子力による発電を即時停止するとした。新たな高速実証炉開発の中止や再処理工場廃止、核燃料サイクルの即時撤退を目指す。石炭火力からの計画的撤退も進め、30年度には原子力と石炭火力の発電量をゼロとする目標を掲げた。

 れいわも、原子力を即時禁止し、国有化する方針を明記。廃炉作業を「公共事業」と位置付け、関連技術の開発や人材育成を推進する。地域分散型自然エネルギーの普及も進める。

電気新聞2022年6月17日