ロシア産石炭の段階的禁輸を巡って、オーストラリアなど需要を埋めるための産炭国が「奪い合い」になる可能性が出ている。日本の電力会社が使う高品位の一般炭調達地は限られる。一方、化石燃料への投資は減少し、豪州などで一般炭炭鉱の大規模増産や新規開発を行う動きは鈍い。先にロシア産の禁輸を決めた欧州は豪州にも調達の手を広げる。生産余力が限られる中、日本の一般炭調達環境は厳しさを増している。 (荻原 悠)


 日本の一般炭輸入で最大のシェアを占めるのは豪州で、その割合は約77%(2021年、財務省貿易統計)。約8070万トンを輸入した。ロシアからは約1350万トン(21年)を輸入し、総輸入量の約13%を占める。豪州に比べて日本に近く、機動的で輸送コストを抑えた調達が可能。発熱量も豪州炭に劣らず、近年重要性が増していた。

 日本が輸入する一般炭のほとんどは高品位炭だが、調達地は限られる。豪州のほか、インドネシア炭の一部、ロシア炭など。3カ国で日本の一般炭輸入量の9割以上を占める。ロシア産の輸入を削減する場合、代替調達源が必要になるが、現時点で生産能力の増強を確実視できる産炭国は見当たらない。

 豪州は新型コロナウイルスや洪水の影響で石炭の輸出量が減少。4月以降は回復に転じる見込みだが、今後日本などの代替需要に応えるだけの生産増強が見込めるかは不明。関係者は「(ロシア産禁輸などの現状を踏まえれば)一時期に比べれば当然生産量を増やすだろう」と予測する。ただ「(大規模増産などについて)具体的な動きはまだ見えない」(同じ関係者)。
 

緑の党と連立?

 
 豪州内の政治動向も懸念材料の一つだ。モリソン首相率いる現政権は化石燃料の生産と脱炭素の両立を図ってきた。しかし5月に控える総選挙で野党・労働党への政権交代も取り沙汰される。情勢は流動的で、労働党の議席獲得数によっては化石燃料に批判的な「緑の党」が連立入りするとの観測も出ている。石炭の大規模増産を図ることが政策上難しくなる可能性もある。

 インドネシアは昨年末にかけて起こった一般炭の在庫不足を受けて、石炭の輸出規制を強化中。生産量に対する国内供給義務(DMO)を25%から30%に引き上げることを検討している。以前と同程度(約1560万トン、20年)の輸入を確保できるか不透明な状況だ。
 

依存度高い欧州

 
 こうした状況に欧州などとの争奪戦が加わる。トルコなどを含む欧州31カ国は一般炭需要の54%(20年)をロシアに依存。ウクライナへの侵攻以前から北米や南米コロンビアなどからの代替調達に出ており、豪州にも手を伸ばしている。EU(欧州連合)はロシア産石炭の禁輸を決め、この流れに拍車が掛かる可能性は高い。

 石炭需給の逼迫感は以前にも増して高まっている。豪州炭スポット価格は3月に一時1トン=400ドル超となった。日本の電力会社などは長期契約をメインとしているが、関係者によると市況連動で価格が決定する契約も増えているという。高騰のあおりも受け、日本の一般炭平均輸入価格は2月に初めて1トン=200ドルを超えた。

 日本政府の「段階的禁輸」は年限を決めていない。足元の電力需給や電力会社の経営、電気代などへの影響を考慮した代替計画が必要になる。

電気新聞2022年4月14日