国際的な燃料価格高騰で大手・新電力を問わず値上げを余儀なくされる中、自由料金より「割安」となった最終保障供給サービスへの依存が懸念されている。セーフティーネットという本来の制度趣旨に合わないだけでなく、「逆ざや」での供給で一般送配電事業者の赤字が広がれば託送料金に影響が及ぶ事態も想定される。見直しにあたっては長期依存の防止に加え、料金水準の適正化が喫緊の課題といえる。(新田 剛大)

 経済産業省・資源エネルギー庁が公表した需要実績によると、一般送配電事業者10社の最終保障供給量は昨年11月に前月比29.7%増の507万6千キロワット時だった。推移を見ると20年12月までは300万キロワット時前後が多かったが、21年1月のスポット価格高騰を受けて急増。ただ、3月に9545万4千キロワット時へ達して以降は徐々に落ち着いてきた。

 再び供給量が増加した11月は新電力、大手電力とも調達コスト上昇を受け需要家との値上げ交渉を本格化した時期。これに伴って最終保障料金が自由料金を下回る状況が顕在化しており、12月以降も最終保障サービスの利用が拡大している可能性は高い。

 ENECHANGE(エネチェンジ、東京都千代田区)の城口洋平・代表取締役CEOは、需要家の間でも最終保障料金が“割安”なことを知り、あえて選択する動きもあると指摘する。

 「こうした需要家が続出すれば自由競争が阻害されるのに加えて一般送配電事業者の赤字が拡大し、将来的に託送料金に跳ね返る可能性もある」と話す。同社は早くからエネ庁や電力・ガス取引監視等委員会に対し、最終保障料金の改定を働き掛けてきた。

 一般送配電事業者は電源を持たないことから、周波数維持のために調達した調整力で最終保障供給を行う。公募の枠組みでは専用で使う「電源Ⅰ」と、小売り用電源の余力を活用する「電源Ⅱ」がある。これらは、稼働に伴う電力量(キロワット時)を精算する仕組みで、調整力の提供者が毎週単価を登録する。

 燃料価格高騰で、特に火力が7割強を占める「電源Ⅱ」のキロワット時単価は大幅に上昇したとみられる。大手電力の標準メニューの1.2倍という現行の料金水準では逆ざやが避けられない。最終保障供給への依存は、一般送配電事業者の赤字拡大という懸念をはらむ。

 エネチェンジの城口CEOは秋以降の大幅値上げにつながったそもそもの要因として、「燃料費調整制度の不整合」という問題も指摘する。新電力の多くが大手電力の燃調をそのまま採用し、実際の電源構成や卸市場価格を小売価格に反映できていない。これが収支悪化の主因だ。

 そこで、最終保障料金の引き上げなどと合わせて、「新電力各社も調達実態に合わせた“独自燃調”を導入するべきだ」と主張する。卸市場との連動性が高まって需要家の負担増加も想定されるが、「逆ざやで撤退に追い込まれることは避けられる」と指摘。その際は、需要家が料金を比較することができるように、国が一定の指針を定めることも提起している。

電気新聞2022年4月5日