燃料・電力市場価格高騰で追加供給力確保できず
大手電力が特別高圧、高圧といった法人向け電力プランの新規契約を一時停止するケースが相次いでいる。いずれも燃料価格や電力調達価格の高騰により、追加の供給力の確保が担保できないと判断したもよう。同様の背景で事業撤退や値上げに踏み切った新電力から、大手電力に契約を切り替えたい法人が急増しているが、一般送配電事業者の最終保障供給に誘導せざるを得ないケースも出てきた。
電気新聞の取材に対し、特別高圧と高圧の新規受け付けを停止したことを明らかにしたのは、北陸電力、中部電力ミライズ、関西電力、四国電力、九州電力。各社ともに再開のめどは立っていない。中国電力は「新規契約に対応できないケースが一部ある」と回答した。
北陸電力は契約切り替えに関する問い合わせが2021年12月から増加。22年2月から要望に応えることが難しくなり、3月から新規受け付けの停止を余儀なくされた。北陸エリアは法人のみが停止の対象だが、首都圏では法人、家庭ともに新規契約を断っている。
九州電力は低圧を含めた法人向けプランの受け付けを停止。公共施設で使用する電力の供給者を決める入札への対応についても、九州電力は「現時点では応札を辞退している」と明らかにした。
新たな契約先を見つけられない法人は、一般送配電事業者による最終保障供給に頼るほかない。最終保障供給の料金水準は標準メニューの1.2倍に設定されているが、関電は「(小売で)提示できる価格水準は、最終保障供給約款よりも高くなる」と説明する。本来は「セーフティーネット」として機能すべき最終保障供給の方が、小売料金よりも割安という想定外の事態に陥っている。
自ら顧客を拡大する機会を手放す現状には、営業の最前線からも困惑の声が上がる。営業活動を指揮する大手電力社員は「(営業攻勢をかけていた)2、3カ月前と真逆の内容をお客さまにお話ししないといけない」と、異例の対応を迫られる現状に嘆息していた。
昨冬からの電力市場価格の高騰に、ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料高が重なり、新電力が撤退したり顧客を手放したりするケースが相次いでいる。自前の電源を持つ大手電力すら、法人向けの電力供給に行き詰まる事態は、東日本大震災以降の自由化の在り方に疑問符を突きつけているといえそうだ。
電気新聞2022年4月13日