欧州で上昇、アジア向けLNGも

 
 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、エネルギー価格が急騰している。欧州の天然ガス先物価格は24日、前日比5割近く上がり、100万Btu(英国熱量単位)当たり40ドルを超えた。この状況に引きずられ、アジア向けLNG先物価格も40ドル前後に達した。日本の電力・ガス会社が輸入するLNGは長期契約の比率が高いとはいえ、産ガス国で生産トラブルが起きれば、高値のスポット市場からの調達を余儀なくされる可能性もある。収支悪化のリスクは高まっている。

 欧州の天然ガス価格指標であるオランダ「TTF」は24日、期近の3月物から来年3月物までの先物価格が40~44ドルに達した。冬本番を迎えた昨年12月下旬以来、約2カ月ぶりの高値水準だ。この状況を受けて電力先物価格も同程度の上昇幅を示し、欧州エネルギー取引所(EEX)のドイツの先物価格は日本円で1キロワット時当たり40円近くに高騰している。
 

しばらく落ちず

 
 欧州は今冬、高めの気温とLNG輸入増によって天然ガス在庫不足を乗り切ったが、市場関係者は「ロシアからの供給不安によって来冬に向けた在庫確保が危ぶまれている」と指摘する。春先から秋にかけて在庫を積み増せなければ、LNGの争奪戦が世界中で激化する見通しで、同関係者は「しばらくは価格も落ちてこないのではないか」とみる。

 アジア向けLNG価格「JKM」も24日、期近の4月物から来年3月物までの先物価格が36~40ドルに上昇した。

 JKMは昨年10月に一時56ドルと史上最高値を更新した後、今年1月中旬から2月23日の終値まで、ほぼ20ドル台で推移した。欧州ガス価格の相対的な低下が大きな要因だ。マレーシアの生産障害などいくつか不安要素はあったが、中国での温暖な気温予想や同国の2月以降のLNG販売増などもあり、市場で供給への安心感が広がっていた。しかしロシア軍によるウクライナ侵攻がこの流れを止めた。

 JKMとTTFは米国産LNGを介して高い相関関係にあり、市場関係者の一人は「TTFの高値に引っ張られ、JKMが追随した形だ」と指摘する。

 日本の電力・ガス会社はLNGの多くを原油価格リンクの長期契約で確保しているとはいえ、「全く安心はできない」(市場関係者)。マレーシアのような生産トラブルが産ガス国でひとたび発生すれば、JKM連動での調達を余儀なくされる可能性もある。

 オーストラリア炭も3月物の価格が18日から3割以上伸び、24日に1トン当たり271ドルとなった。
 

豪州炭高止まり

 
 豪州炭先物価格は複数の供給不安要素を受け、高止まり傾向が続く。昨秋の急騰要因となった中国での石炭減産が解消した一方、豪州での多雨やオミクロン株の感染拡大、インドネシアの石炭禁輸措置などが影響。そうした基調にウクライナ情勢の緊迫、ロシア軍の侵攻が加わり、大きな上げ要因になっている。

 原油や一般炭を含めた価格上昇が継続した場合、輸入燃料価格の変動を電気料金に反映させる燃料費調整の限界に達する。既に4月の燃料費調整では、北陸、関西、中国、四国、沖縄の電力5社が上限価格を突破した。上限超過分は調整できないため、収支への影響が今後膨らむ恐れがある。

電気新聞2022年2月28日