新電力全体で特別高圧・高圧の契約口数が減少している。電力・ガス取引監視等委員会がまとめた昨年11月分の電力取引報によると、特高は3カ月連続、高圧は2カ月連続で前月を下回った。特高・高圧双方の契約口数が2カ月連続で前月割れとなるのは、2016年4月の小売り全面自由化後初めて。新電力は卸市場価格の安値を背景に契約口数を堅調に伸ばしてきたが、曲がり角を迎えた。

 新電力の昨年11月の特高契約口数は前月比4件減の2139件となり、昨年9月からの3カ月間で計65件減少した。昨年2、3月も卸市場価格高騰の影響で計20件減ったが、今回はそれを上回る規模だ。また、昨年11月の高圧契約口数も同2607件減の26万3396件にとどまり、昨年10月からの2カ月間で計3266件減った。一方、旧一般電気事業者の契約口数は特高・高圧ともに増えており、新電力から顧客が流れたとみられる。

 要因として考えられるのは、新電力の料金値上げだ。各社は昨冬の卸市場価格高騰で経営体力をそがれた上、相対で調達する電力コストが上昇。今冬の電力需給逼迫も警戒された中で、値上げ交渉に踏み切らざるを得なかったようだ。

 電力切り替えサービスを提供するENECHANGE(エネチェンジ、東京都千代田区、城口洋平代表取締役CEO)は、既に昨年10月時点で、契約更新時に値上げ提案する小売電気事業者が急増している調査結果を報告していた。同社の千島亨太執行役員は電気新聞の取材に対し、「今冬にかけても料金値上げが増えており、昨年12月と今年1月は需要家からの相談件数が平常時の2倍を超えた」と話す。昨年12月以降の契約口数はまだ公表されていないが、今後も減少基調が続きそうだ。

 卸市場価格は昨年10月頃から上昇が顕著になり、低圧に比べて小売料金の低い特高・高圧分野では、調達コストが販売価格を上回る「逆ざや状態」に陥る事業者が続出。昨年11月にはハルエネなど高圧供給から撤退する新電力も複数みられた。

 ある新電力幹部は「低価格を売りにして電気を販売する時代は終わった。値上げによる離脱を一定程度許容した上で、得意先とどう関係を築いていくかが大事になる」と強調する。価格競争から脱し、太陽光のオンサイトPPA(電力購入契約)やデマンドレスポンス(DR)など、新たな付加価値サービスを顧客に提案していく必要がある。

 こうしたサービスを開発するには企画力や技術力が必要で、小規模事業者が起死回生の一手を打つのは困難だ。エネチェンジの千島氏が「特徴的な小売戦略を業界全体で模索する必要がある」と話すように、新電力同士の協力・連携も重要になりそうだ。事業環境が変わった今こそ、ビジネスモデルを練り直す時期に差し掛かったといえるだろう。

電気新聞2022年3月2日