英国スコットランド沖で総設備容量約2500万キロワットの大規模洋上風力開発プロジェクトが始動する。17日に事業者公募の結果が明らかになった。落札者の中で存在感を放つのは石油メジャーなど欧州エネルギー大手だ。発電分野の脱炭素を進めたい英国政府は公的支援を拡充。これに石油メジャーや再エネシフトを進める大手エネ企業が乗ったとみられる。
 

35年「実質ゼロ」へ

 
 スコットランド政府の発表によると、計画設備容量の多くを占めるのは欧州の有名エネ企業。英シェルの事業体が200万キロワットを占めるほか、同じく石油メジャーの英BPも約290万キロワットを開発する。スペインのエネ大手イベルドローラ傘下の英スコティッシュ・パワーは計500万キロワットの計画を主導。フランスのエネ大手エンジーなども名を連ねる。

 こうした企業の参画を、英政府の国を挙げた支援策が後押し。英政府は2020年10月、30年までの洋上風力導入目標を4千万キロワットにする方針を発表。21年10月には発電分野の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを35年までに達成する目標を示した。これに向けて洋上風力の部材供給網や港湾、送変電設備の整備などに3億8千万ポンド(約582億円)投資することも表明した。

 こうした支援を受けられるプロジェクトは脱炭素事業の開拓を進める石油メジャーにとって渡りに船だ。加えて、脱炭素のただ中にある欧州のエネ企業では再エネやネットワーク関連など公的支援が付く「規制事業」に経営資源を集中するのが主流になっている。

 イベルドローラの20年の売上高に占める規制事業の比率は実に48%。仏エンジーも、45年のネットゼロに向けて再エネやインフラといったコア事業に投資を集中している。
 

事業者ニーズ汲む

 
 今回の事業がスコットランド経済の活性化と脱炭素化の原動力と位置付けられているのも重要だ。事業者側からすれば予見性が高く、長期的な売電収入が見込める。英国の脱炭素は政府主導のもと、再エネ事業を拡大したい企業のニーズを取り込む形で進行している。

電気新聞2022年1月26日