日本列島はこれから冬本番を迎える。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格は12月に入って軟化したが、来週後半以降、東日本エリア以西で寒さが本格化する見通しだ。特に西日本は低温と曇天が数日間続く可能性があり、価格高騰のリスクが迫っている。

 スポット市場価格は10月頃から上昇傾向が目立った。11月のシステムプライスは月平均で18円48銭と、需要の端境期にもかかわらず高圧小売料金を上回る高値で推移した。

日本気象協会エネルギー事業課の渋谷早苗氏は「過去2年間に比べ、価格が上昇し始める気温帯が5度ほど高い」と指摘する。例えば午前10時~正午の時間帯、従来は10度未満になると価格上昇が顕著に表れたが、今年は15度程度に上振れした。気温と需要の関係に変化はみられず、手薄な供給力が要因とみられる。新電力関係者は「今秋は例年以上に電源の定期点検が集中した。コロナ禍だった前年の反動と、冬の需給逼迫への警戒からだろう」と話す。

 価格の上がり方も急だった。特に11月22日受け渡し分では、東日本エリアでインバランス料金の上限となる80円を記録。西日本エリアもそれに迫る高値だった。複数の関係者は買いブロック入札の影響が大きいとみる。化石燃料価格が歴史的高値で推移する中、冬本番に備えた燃料在庫の積み増しや燃料の転売を目的に、自社火力の出力を絞ってスポット調達に差し替える動機が強まった。
 

定検電源復帰も気象リスク上昇

 
 12月に入るとスポット価格は軟化した。定期点検中だった電源が順次復帰したことに加え、「火力の燃料消費ペースが変わったのではないか」(市場関係者)とみる向きもある。冬本番を迎え、在庫を積み増す段階から計画的に消費する段階に移行したとの見方だ。市場関係者は「(11月から相次いだ)燃料制約による火力の出力低下は解消に向かうと考えるのが自然」と指摘する。

 現段階で燃料不足は回避できる見通しだが、気象リスクはこれから上昇する。今冬(12~2月)は平年に比べ、東京エリア以西で低温傾向が見込まれる。気象協会の渋谷氏は「平年に比べて極端に低温に振れるリスクは少ないとはいえ、安心できる状況ではない」と話す。

 冬の天気は、低気圧の通過後に寒気が南下し、西高東低の気圧配置になる。次第に高気圧に覆われてくるが、それが緩むと再び低気圧がやってくる。この流れを数日から1週間周期で繰り返す。

 至近では来週後半から強い寒気が流入し、西日本の気温は晴れても10度程度にとどまる見通し。日本海側では降雪が予想され、価格高騰が数日間続くリスクがあるという。来年1月の平均気温は西日本、東日本ともに前年並みの見通しだ。
 

LNG高止まり背景に先物は高水準

 
 欧州エネルギー取引所(EEX)の電力先物価格は、11月下旬から下落傾向にあるとはいえ、今月6日取引終了時点で12月物が23.5円、1、2月物は27円台前半と高水準だ。アジア向けスポットLNG(液化天然ガス)価格の高止まりが背景にある。低温・降雪のほか電源脱落のリスクもあり、小売電気事業者にとって厳しい冬になる可能性がある。

電気新聞2021年12月8日