需要家保護の観点で問題に
電力市場価格の高騰を受けて、高圧供給から撤退する小売電気事業者が出てきた。ハルエネ、リケン工業、スマートテックなどは11月、契約期間の更新を行わないと顧客に通達。冬の本格的な需要期を迎える前に顧客をいち早く手放し、電力調達コストを抑える狙いだ。顧客の契約切り替えがスムーズに進まなかった場合、需要家保護の観点で大きな問題になりそうだ。
ハルエネは新電力の販売電力量ランキングで17位(7月実績、2億4900万1千キロワット時)につける企業。販売電力量の大半は低圧向けだが、高圧向けも1~2割程度を占めており、撤退の影響は小さくない。リケン工業とスマートテックは、販売量はハルエネより少ないものの、高圧供給を中心に事業を拡大してきた。
高圧供給からの撤退は電力市場価格の高騰が原因とされる。需要の端境期である10、11月に高値が続く事態が発生。11月のシステムプライスは平均18円48銭と、高圧向け小売料金を上回る水準となっている。
既に9月頃から、今冬の電力需給逼迫を懸念して契約更新時に値上げ提案を行う事業者が増えていたが、対応が遅れた事業者は供給を継続することが難しくなっている。一部の事業者は、代理店による高圧契約の受け付けを停止しているとみられる。
撤退を表明した事業者は速やかな契約切り替えを顧客に呼び掛けている。11月16日に撤退を通知したリケン工業は、約2週間後の12月3日を「契約解除日」として設定しており、一刻も早く顧客を手放したいようだ。
顧客の与信に悪影響の可能性
顧客は今後、短期間のうちに新たな事業者を探さなくてはならない。万が一契約切り替えが不調になった場合は、一般送配電事業者の最終保障サービスを受けることになる。
ENECHANGE(エネチェンジ)の千島亨太執行役員は、最終保障への安易な移行に警鐘を鳴らす。「需要家にとっては電気料金が高くなるだけでなく、与信に不安があるとみなされて次の契約交渉が難しくなる」と指摘する。
昨冬の電力市場高騰を踏まえ各事業者はリスクヘッジを行ってきたはずだったが、高圧供給を断念する事業者が既に出てきている。今冬の電力需給は過去10年間で最も厳しい見通しのため、今後も市場動向を注視していく必要がありそうだ。
電気新聞2021年12月2日