岸田文雄首相はきょう14日、衆議院を解散し、各党は31日の投開票に向かって事実上の選挙戦に突入する。主要政党が公表しているエネルギー・環境政策を見ると、再生可能エネルギーの導入拡大や省エネルギーの推進などでは方向性がほぼ一致。一方、原子力に対しては、自民、国民民主、日本維新の会が活用に比較的前向きで、公明、立憲民主、共産との違いが際立っている。

 原子力について、自民は「カーボンニュートラルに向けた不可欠な電源」とし、必要な規模を持続的に活用する方針で、核融合炉やSMR(小型モジュール炉)の開発も進める。維新は、小型高速炉など次世代炉研究の強化などを訴えた。

 国民は「新増設は行わない」などとする一方、「2030年代原発ゼロ社会」は撤回し、「カーボンニュートラル社会の実現に向けてあらゆる手段を確保・活用する」と表明。「あらゆる手段」について、全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)幹部は「次世代炉やSMR、核融合などを視野に入れたリプレースも想定している」と解説する。

 一方、公明は「原発ゼロ」社会を目指す方針を堅持し、新設は認めない考え。原子燃料サイクルは、国が前面に立って取り組む姿勢を示した。立民は新増設を認めず、「原発に依存しないカーボンニュートラル」を目指す。共産も、原子力、核燃料サイクルからの撤退を訴えた。

 再生可能エネに関しては「主力電源化を目指す」(自民)、「最優先の原則のもとで最大限導入」(公明)、「導入拡大に向け、国が送電網整備を行う」(立民)など、導入拡大へ各党の方針に大きな差は出ていない。公明は、太陽光の導入補助制度の創設や優先接続の制度設計などを盛り込んだ。

 火力では、自民が再生可能エネの調整力としての重要性を指摘し、石油・天然ガスの安定供給にも触れた。公明は脱炭素化に向け、石炭とアンモニアの混焼実証を進め、技術輸出で成長産業に育てることを提案した。

 個別政策では、立民はエネルギー活用効率の最大化を掲げ、省エネ機器の普及や住宅の断熱化を促進する補助制度の創設を主張。国民は蓄電システムを併設した太陽光発電システムにより、電力コストを大幅に低減する自家消費型電源システムの実現を目指す。維新は容量市場について、「石炭火力や既設原子炉の温存につながる」とし、抜本的見直しを掲げた。

電気新聞2021年10月14日