電力先物取引価格の上昇が止まらない。欧州エネルギー取引所(EEX)の来年1月分の清算価格(東京ベースロード商品)は、6日取引終了時点で1キロワット時当たり30円を超えた。天然ガスやLNG(液化天然ガス)価格の世界的な高騰が背景にある。電力小売料金を上回る水準だが、スポット取引に依存するのはリスクが高く、小売電気事業者の苦悩は深まるばかりだ。(3面に関連記事)

 同日時点の清算価格は、来年1月物で30円04銭、2月物で29円04銭。わずか1カ月間で1.8倍に跳ね上がった。市場関係者は「LNG価格の高騰以外に理由が思い当たらない」と話す。

 現在、欧州の天然ガス在庫不足を引き金として、天然ガスやLNGの争奪戦が世界中で過熱。アジア向けスポットLNG価格「JKM」の来年1、2月分の先物は100万Btu(英国熱量単位)当たり約39ドル(4300円)まで上昇した。

 日本の電力・ガス会社のLNG長期契約は原油価格連動が多いが、電力需要が伸びればスポット調達が必要になる。JKM価格連動の契約も増えているといわれ、影響は避けられないもようだ。

 JKMは、欧州の天然ガス価格指標であるオランダガス価格「TTF」に連動している。欧州の天然ガス在庫不足は改善の兆しがみえず、TTFは右肩上がり。来年1、2月分の先物価格は約37ドル(4100円)に達した。

 こうした状況を受け、EEXのお膝元であるドイツの先物価格も歴史的高値圏にある。5日取引終了時点の清算価格は来年1、2月分で1キロワット時当たり約0.28ユーロ(36円)。さらに22年1年分で約0.16ユーロ(20円)の史上最高値を更新した。天然ガスやLNGという商材を介し、欧州と日本の電力価格にも相関関係があり、今後の動向が注目される。

電気新聞2021年10月8日