東京電力ホールディングス(HD)は、中途を含む退職者を臨時雇用するための仕組みを年度内に整える方針だ。大規模災害、国家的行事などの対応で一時的にマンパワーが不足するような事態に備える。スマホアプリ「シェアフル」を活用し、登録した退職者と会社側のニーズをマッチングさせるもので、「TEPCO Sta.(テプコステーション)」と名付けた。8月上旬にアプリの配信を開始。9月以降、東京電力パワーグリッド(PG)で実証的な運用に入り、実績を見ながら適用を拡大していく。

 東電グループは経営改革の一環で、効率的な業務運営を念頭に要員を減らしてきた。その一方、近年は自然災害が大規模化、頻発化しているといわれ、一時的に現場のマンパワーが不足するリスクが高まっている。東京五輪・パラリンピックのような巨大イベントへの対応も同様だ。

 2019年9月、台風15号で広範囲にわたる深刻な設備被害を受けて大停電が発生した際、多数の退職者から業務支援の申し出があったが、安全面の理由などで断念せざるを得なかった。そうした経緯を踏まえ、豊富な経験、技術・技能を持つ退職者を現場のニーズに応じて柔軟に雇用するためのプラットフォームを構築することにした。

 求人にあたって会社側は、特定の資格・スキルの要不要や、当該業務の必要性・発生頻度・専門性の高さを示す。

 例えば、非常災害時における「宿泊所の後方支援」の場合、特定の資格・スキルは不要で、必要性「高」、発生頻度「中」、専門性「低」としている。登録済みの退職者は、そうした求人情報を見て応募する。

 テプコステーションは、労働条件通知書の作成のほか、勤怠管理、給与計算・支払いなどの事務処理をシェアフルが行うため、社内の業務負荷をほとんど増やさずに運用することができる。

電気新聞2021年9月3日