電力広域的運営推進機関(広域機関)の有識者会合は20日、系統の長期整備方針(マスタープラン)に盛り込む一部の連系線増強案について、早期に整備計画を具体化する方針を確認した。マスタープランの中間整理で示した各シナリオ共通で必要な増強案を想定。北海道~本州間をつなぐ高圧直流送電(HVDC)の新ルートや中地域(中部、北陸、関西)、九州~中国間の連系線増強について具体化が進む見通し。

 マスタープラン検討委員会(委員長=秋元圭吾・地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー・主席研究員)で、中間整理を踏まえた検討課題として示された。

 全ての増強案を盛り込んだマスタープランの最終版は2022年度中の完成を目指している。ただ、系統増強には長期間を要することも考慮し、必要性の高い増強案は早期に着手する。まずは各増強案に優先順位を付け、整備計画として具体化するための仕組みを検討していく。

 早期着手が見込まれる増強案のうち、北海道からの連系線は東北か東京との間をHVDCでつなぐ。中地域は中部関西間第二連系線を新設し、北陸を加えた3エリアを交流連系でループ化する案。九州~中国間は現行の連系線容量を278万キロワットから556万キロワットへと倍増させる案となっている。

 その他の検討課題として、中間整理では電源の立地誘導や再生可能エネルギーの余剰電力を活用する需要側対策を考慮する必要性も指摘している。こうした点は国のエネルギー政策と関わるため、経済産業省の審議会とも連携して検討する。

 並行して調整力の確保や系統安定性の維持といった課題に対する検討も深める。調整力については北海道エリアを事例に、洋上風力が増加した際の出力平滑化効果なども踏まえた必要量を議論。系統安定性を保つ慣性力、同期化力の確保やレジリエンス(強靭性)向上のため必要となる対策やコストも検討していく。

電気新聞2021年5月21日