電力広域的運営推進機関(広域機関)の有識者会合は30日、今夏(7~9月)の電力需給見通しを盛り込んだ需給検証報告書案を了承した。過去10年で最も暑かった年度並みの気象を前提とした最大電力(H1)に対し、連系線などを活用すれば全エリアで最低限必要な予備率3%以上は確保できる見通し。ただ、7~8月ともかろうじて3%を超えるエリアが多い。夏までに需給バランス悪化時の情報発信の在り方も検討していく。

 「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」(委員長=大橋弘・東京大学公共政策大学院院長)で報告書案が示された。

 需給検証は供給計画上の最大3日平均電力(H3)をベースにH1を想定。一般送配電事業者が公募する厳気象対応の調整力「電源I’(イチダッシュ)」や火力発電所の増出力運転、連系線の活用を織り込む。

 その上で、H1に対する7月の予備率は東日本で4.5%、西日本で3.7%、沖縄で29.9%を確保できる見通し。

 ただ、広域機関は設備容量(キロワット)が足りていながら電力量(キロワット時)が不足した2020年度冬の状況を踏まえれば、「需給バランスが十分に確保できると判断するのは早計」と指摘した。

 21年度の供給計画で広域的な予備率が8%を下回ったことも考慮し、電源トラブルなどを注視する必要性を訴えている。

 このほか、需給検証報告書案には20年度冬季(昨年12月~今年2月)の需給実績の検証結果を盛り込んだ。10エリア計の最大電力は1月8日午前9~10時に記録した1億5607万キロワットで、予備率は9%。事前に想定した最大電力は厳寒だった7エリアで上回ったものの、東京が比較的穏やかな気象だったため全国合計では下回っている。

電気新聞2021年5月6日