日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の高騰を受けた制度の見直しに関する検討が、電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合(座長=稲垣隆一弁護士)で5日に始まった。燃料不足が懸念される場合、現行の限界費用ベースでの売り入札の仕組みをどう考えるかなど、主に4テーマを議論する。事務局はスポット価格連動で高騰したインバランス料金の動きも分析し、現行制度の改善要否や2022年度に導入する新制度の設計が適切かを確認する考えを示した。

 スポット価格は昨年12月中旬から高騰。システムプライスの最高価格は1月12日渡しから200円を超え、15日渡しに251円00銭を記録した。インバランス料金(速報値)も14日渡しに過去最高の224円96銭がついた。燃料不足で減少した売り札を巡り、買い手の競り合いが過熱したためだ。足元の価格は沈静化しているが、市場参加者などから根本原因の解明と再発防止策を求める声も上がっている。

 電力・ガス監視委はスポット価格の高騰を受けた制度面の課題は、主に(1)売り入札価格の考え方(2)インバランス料金(3)需給曲線、燃料在庫などの情報開示(4)高騰リスクをヘッジする電力先物や先渡しの一層の活用――と整理した。

 売り入札価格は、発電所の供給余力の全量を限界費用ベースで入札するルールがある。一部の委員は、燃料不足のシグナルを費用に反映することが適切という認識を示した。

 大橋弘専門委員は「『機会費用』も勘案すれば(売り入札の)価格は上がっていく」と述べ、スポット市場に適正な価格シグナル機能を組み込むことが重要との考えを示した。また、岩船由美子専門委員は「燃料制約下でも、高価格で入札できれば売り入札量が増えた可能性がある。限界費用での玉出しは根本的に見直すべき」と強調した。圓尾雅則委員は「限界費用ベースでない入札は、発電と小売間の取引が内外無差別なことが大前提」とした上で、「需給逼迫時のみ、限界費用ベースでない入札を認める限定案も考えられる」と指摘した。

 インバランス料金は、22年度から平常時は実際の調整力コストを反映し、需給逼迫時は供給予備率の減少とともに価格を上げる新制度が導入される。事務局は新制度の考え方を適用し、今回の高騰したインバランス料金の動きを分析し、制度設計が適切かを確認する。委員からはおおむね異論が出なかった。

 情報開示の検討項目のうち、燃料在庫は一部委員から需給逼迫時の全国大の公開を検討するよう求める声が上がった。オブザーバーの松本一道・九州電力コーポレート戦略部門部長は「非常時と平常時を峻別した冷静な検討が必要だ」とし、「安易な情報公開は発電事業者の競争環境に影響する」と慎重な検討を求めた。需給曲線はJEPXでの常時公開も含め、具体的な検討を進める方針を確認した。委員間で電力先物・先渡し市場の重要性に関する認識も一致した。

電気新聞2021年2月8日