今冬の電力需給逼迫は悪天候に起因する太陽光の出力減少が原因の一端になった。中でも大きな影響を受けたエリアの一つが九州だ。1月1~20日の発電実績(午後1時台)が約200万~650万キロワットと上下に振れ、ただでさえ綱渡りだった需給運用に大きな影響を与えた。当日朝の出力予測と実績が100万キロワット以上かい離した日も複数あり、危機時の供給力として運用する難しさをあらためて印象づけた形だ。

 九州電力送配電エリアは12月末時点で約1015万キロワットの太陽光が系統連系している。平時は昼間の電力供給を支える重要なゼロエミッション電源だが、今回の需給逼迫ではその扱いづらさが目立った。

 系統運用面で課題になったのが出力のぶれだ。九州電力送配電が公表した1月1~20日の太陽光の発電実績(午後1時台の平均値)によると、太陽光出力は最も低かった206万キロワット(1月5日)から、最大646万キロワット(19日)まで上下に大きく振れた。
 
 ◇バランスの悪化
 
 今冬のピーク時供給力が1600万キロワット規模だった九州エリアにおいて、日々数百万キロワットで変動する太陽光に合わせ、瞬時の需給バランスを維持するのは決して容易ではない。

 また、冬の最大電力を更新し、需給が逼迫した8日は雪などの影響で太陽光出力が230万キロワット(同)と低調だった。7日夜にベース供給力となるJパワー(電源開発)の松島火力発電所2号機(石炭、50万キロワット)がトラブルで戦線離脱し、太陽光とのダブルパンチで需給バランスを悪化させた。

 天候悪化により一日の中で大きく出力が変動し、広域の需給バランスに影響を及ぼした例もある。象徴的だったのが1月13日だ。

 午前中は天候に恵まれ、11時台に最大435万キロワットを記録したものの、午後から徐々に出力が減少。2~4時の平均出力は約220万キロワットに落ち込んだ。同日午前、九州送配電は他エリアに電力を融通していたが、太陽光の急な出力減少などが影響して需給バランスが悪化。電力広域的運営推進機関が同日午後3~6時にかけて、東京、中部に最大160万キロワットを九州に融通するよう指示した。

 太陽光の出力予測の難しさも浮き彫りになった。九州送配電による当日朝の予測(1時時点)と比べると、11日の実績値(1時台の平均値)は125万キロワット、13日は159万キロワット低かった。

 太陽光が抜けた穴はLNG(液化天然ガス)火力などで補う必要があり、結果的にLNGの在庫不足を助長する一因になった。
 
 ◇調整電源必須に
 
 国は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大を目指しているが、太陽光などの出力変動は、特に危機時において見過ごせないリスクになり得る。目標を実現するためには出力予測の精度向上、それでも出てくる不足分を補う調整電源の手当てが必須といえそうだ。

電気新聞2021年2月2日