注:2021年1月6日付の記事を紹介しています

 
 日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の高騰が止まらない。要因は年末から続く圧倒的な売り札不足。寒波が長引く中、高い電力需要を支えてきたLNG(液化天然ガス)火力の在庫が目減りし、次々と出力低下を余儀なくされた。24時間平均のシステムプライスは1月1日受け渡し分から6日連続で30円以上を記録。1月6日受け渡し分は80円に迫り、午後4時半~5時にはシステムプライスで初めて100円をつけるという異例の年明けとなった。
 

*編注:この後さらに高騰し、12日受け渡し分で200円を突破。13日受け渡し分も夕方の時間帯などで200円を超える価格がついている

 
 昨年のスポット価格は記録的安値に沈んだが、年末から状況が一変した。年末年始休暇が始まった昨年12月26日受け渡し分以降、1日当たりの売り札量は従来の10億キロワット時超から8億キロワット時台に減少。一方で買い札量はそれほど減らず、売り札の約定率は98%以上に達している。

 年内は西日本の需給が厳しく、24時間平均のシステムプライスは30円前後で推移した。年明け後は東日本の需給も逼迫し、買い手の競り合いがどんどん過熱。3日受け渡し分から4日連続で過去最高値を更新中だ。

 きょう6日受け渡し分は売り札がほぼ全量売り切れ、システムプライスは24時間平均で前日比16円97銭高の79円38銭に達した。特に、東日本は朝夕のピーク時間帯を中心に100円以上が頻発。午後10時~10時半には100円02銭をつけ、2018年7月に西日本で記録した過去最高値に並んだ。西日本も午前6時半~10時に今年度最高値の90円00銭をつけた。週末にかけて寒さは一段と厳しくなる予報で、価格高騰が収まる気配はみられない。

 こうした状況を招いたそもそもの要因は想定外の需要増だ。今冬第1弾の寒波が襲来した12月中旬以降、需要電力量は全国的に高水準が続く。12月15日から1月4日までの全国9エリアの需要電力量は前年同期比9・7%増加。厳冬だった17年度に比べても1・1%増え、コロナ禍で需要が減少した夏場と真逆の状況となった。

 火力燃料の在庫は想定を上回るペースで減少。12月下旬から東北、東京、関西、九州など複数のエリアでLNG火力の出力低下が相次ぎ、需給逼迫を招いた。電力広域的運営推進機関(広域機関)の融通指示も複数回出され、12月27、28日は関西エリアが最大200万キロワット、1月3、4日は東京エリアが最大100万キロワットを受電した。

 JERAによると、同社は小売電気事業者の需要想定によって通知された電力量に従い、燃料を調達して発電している。東京エリアの供給力が減少したのは「需要が想定を上回って発電量が増加し、足元の燃料在庫が低下したため」と説明する。業界関係者からは「小売り競争が進展し、余裕を持った需要想定が難しくなったのではないか」との指摘が挙がる。

 LNGの在庫不足はすぐには解消されない。LNGのスポット市場では通常、2カ月先に受け渡す商品を取引する。もっと早く追加調達したくても売り手が見つかるとは限らない。業界関係者によると、2月上旬に引き渡す商品で、夏前の10倍近い100万BTU(英国熱量単位)当たり18ドルの買いニーズがあるが、売り手がつかない状況だという。

 現在のLNG不足は一時的な現象で、年間を通してみると余剰感が強い。再生可能エネルギーの導入拡大でLNG火力の稼働率が低迷。電力各社は余剰在庫を抱え、転売損が経営の大きな足かせになっている。LNGはタンクに入れて長期間貯蔵すると気化してしまうため、夏場に余ったLNGをためておいて冬場に使うといった運用もできない。

 複数の業界関係者は、再生可能エネの導入が加速するとLNG火力の稼働率がますます下がるため、急な需要増に対応しきれないリスクが高まると懸念する。今冬の需給逼迫は、再生可能エネの主力電源化に向けて大きな課題を突きつけたともいえる。

電気新聞2021年1月6日

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