第70回「電気のある生活」写真賞 入賞作品が決定
第70回「電気のある生活」写真賞(全日本写真材料商組合連合会協賛)の入賞作品が決定しました。
「願いを込めて」真田 正之(広島県)
全国530人から1483点の応募がありました。最優秀賞には真田正之氏(広島県・81歳)の「願いを込めて」が選ばれました。また特選には、渡邊次夫氏(秋田県・79歳)の「住民生活の守りびと」、準特選には大高久昌氏(愛媛県・83歳)の「紫陽花観光モノレール」と、山口元弘氏(福島県・69歳)の「手仕事の灯り」が、それぞれ選ばれました。このほか入選20点・奨励賞20点が選ばれ、各賞には電気新聞賞と富士フイルム賞がそれぞれ贈られます。
今回の応募者は、年代別では70歳代の応募が39.8%と最も多く、次いで80歳代が21.7%で、退職後の趣味に写真を楽しんでいる世代が全体の半数以上を占めました。男女比は男性84%、女性16%でした。
「電気のある生活」写真賞は1955(昭和30)年から始まり、国内でも有数の歴史がある写真コンテストです。当初は「電気人懸賞写真」として創設され、第27回から名称を現在のものに変更しました。過去には日本大学芸術学部写真学科を創設した金丸重嶺氏、日本を代表する写真家の一人である木村伊兵衛氏も審査員を務めています。
選考は2024年1月23日に行われ、榎並悦子(写真家)、藤本淳一(電気事業連合会専務理事)の両氏が審査を行いました。
私の写真歴は、定年退職後から始めて、約21年になります。
15年くらい前から当コンテストに応募させていただいていますが、毎年落選続きでした。
2024(令和6)年1月23日午後4時21分奇跡が起こりました。電気新聞から“歴史的”最優秀賞受賞の一報をいただいたからです。ありがとうございました。
この作品は、広島県福山市の福山城築城400年を記念したイベントを撮影したものです。ランタンと、お城の明るさが異なる被写体でしたのでお城の白トビを注意しながら諸調整に注力しました。
さて、世界各地の大災害、紛争で、インフラが破壊され、人類の危機を感じます。また国内でも大規模風水害、地震が多発しています。“地球は大丈夫か”と常に思う今日この頃です。特に本年1月1日に発生した能登半島大地震により、被災された皆々様に心よりお見舞い申し上げます。
改めて、“日常の生活”の大切さを痛感しています。
80歳を過ぎた今、残された人生を健康に留意し、写真を生涯の趣味として、楽しもうと思っています。
最後になりますが、関係各位の皆様には、大変感謝しています。本当にありがとうございました。
今年最も目に付いたのは、祭りの写真だ。コロナ禍で中止になっていた祭りの復活を皆さんが楽しみにされ、撮影に出掛けていった様子が伝わってきた。テーマが「電気のある生活」なだけに、特に夜の祭りを撮った作品が多く、祭りに電気は欠かせないものになっていることもあらためて実感した。
応募する皆さんが意識されているかどうかは分からないが、毎年の応募作品や入賞作品を拝見すると、その時代が必ず捉えられている。このコンテストは70回を数える歴史があり、今後も回を重ねると思う。振り返った時に、その時々の時代が感じられる作品にあふれたコンテストであり続けてほしいと思う。
最優秀賞の「願いを込めて」は、福山城の築城400年記念行事を撮影した作品だ。ランタンの明かりが普通のキャンドルではなくLEDを使っていると聞き、非常に驚いた。お城がライトアップされLEDのランタンが天空を舞っている光景は、もちろん400年前には想像も付かないもので、「これぞ現代ならではだ」と感じた。そして、作品のタイトルにあるように、いろんな願いを込めてランタンを空に上げたのだろうという思いも強く持った。
準特選の「紫陽花観光モノレール」は、あじさいの里を訪れた人々が「あじさい号」に乗り、天気が悪い中でも傘を差しながら園内を楽しんでいるという、ほのぼのとした雰囲気が印象的だ。また、モノレールがあることで、ご年配の方も心置きなく園内を巡る助けになっていることも感じられた。
にぎわいや希望、活力を感じさせてくれるような、すてきな作品が多かったと思う。特に興味を引かれたのは、明かりの先にあるものは何かを考えさせてくれる作品だ。
写真はある瞬間を切り取ったものだが、その先をイメージすることで、将来への希望や展望を与えてくれる。最優秀賞の「願いを込めて」は、暗闇の中でランタンが舞い上がっていく様子から、その場にいた皆さんが何を願ってランタンを上げたのか、そしてその願いがどこに届くのかといったイメージがわいてくる。
特選の「住民生活の守りびと」は、その場を通り過ぎてふと見たバックミラーに映った、配電工事の様子を捉えている。電力事業は通常、スポットライトを浴びることはない。このような工事の現場もそうだと思うが、ふとした時に価値を感じて頂けるのは、我々にとって、とてもうれしいことだ。日頃の努力を誰かがどこかで見てくれているんだと思うと、温かい気持ちになる。
準特選の「手仕事の灯り」は、江戸時代から続く人形作りを撮影した作品だ。「伝統をつなぐ」とはどういう意味か、こんな話を伺ったことがある。「前の時代から受け継いだものをそのまま次に引き継ぐのではなく、自分の世代で創意工夫を加え、新しいものとして次の世代につないでいく」ことだと。明かりの下で手仕事をする光景から、伝統が脈々と継承されていく時の流れが感じられる、暖かい作品だと感じた。穏やかな表情と、仕事に打ち込む姿にも心を打たれた。