福島第一を除き14基が廃止決定。重要な“経営マター”に

 
 東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて定められた、実用炉のいわゆる「40年運転制限」。2013年7月に始まったこの制度では、原子力規制委員会の審査を通れば1回に限り最長20年の運転延長が認められる。これまで申請を行った関西電力高浜発電所1、2号機、同美浜発電所3号機、日本原子力発電東海第二発電所の4基全てが認可されたことで、一部メディアからは「ルールの形骸化」との批判も出ている。

今年3月、報道陣に公開された原電・敦賀発電所1号機の廃止措置作業現場。敦賀1号機を含め福島第一事故御14基が廃止を決定した
今年3月、報道陣に公開された原電・敦賀発電所1号機の廃止措置作業現場。福島第一事故後、敦賀1号機を含め14基の廃止が決定した

 
 ◇延長より廃止
 
 しかし、「40年運転制限」の下で、原子力事業者の判断は「廃止」が大勢を占める。福島第一事故後、廃止を決定・検討した実用炉は15基に達した(福島第一1~6号機は含めず)。新規制基準対応の安全対策費が多額にのぼることや、廃炉に関わる会計制度が15年に見直されたことが各社の判断を後押しした。福島第一事故前のピーク時に50基以上が稼働していたことを考えると、本格的な「廃炉の時代」が到来したといえる。

 今年4月に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の原子力小委員会。事故炉ではない通常炉の廃止措置を「一般廃炉」と呼び、初めて集中的な議論が行われた。経産省・資源エネルギー庁幹部は「以前はもっと“牧歌的”だったが、事業者も次第に(一般)廃炉を経営マターとして捉えるようになってきた」と、変化の兆しを感じ取っている。

 事業者が実用炉の廃止措置を決めると、原子炉等規制法(炉規法)に基づき「廃止措置計画」の認可申請を規制委に行い、審査を受ける。規制委発足後ではこれまで6基が認可された。

 廃止措置は(1)解体工事準備(2)原子炉周辺解体撤去(3)原子炉本体解体撤去(4)建屋解体撤去――と主に4段階に分かれ、約30~40年を要する。原電の東海発電所、敦賀発電所1号機、中部電力浜岡原子力発電所1、2号機の4基が第2段階に相当する段階に入っている。4月の原子力小委で事務局のエネ庁は、設備を解体して低レベル放射性廃棄物が本格的に発生する第2~第3段階が「重要なプロセスとなる」と指摘した。
 
 ◇処分場と規制
 
 発電を終えた実用炉から発生する廃棄物のうち、約93%は放射性廃棄物でない廃棄物で、放射能濃度が極めて低く放射性廃棄物として扱う必要のない「クリアランス対象物」が約5%、低レベル放射性廃棄物が約2%という割合だ。低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルの高い順に制御棒、炉内構造物などの「L1」、原子炉圧力容器などの「L2」、解体コンクリートや金属などの「L3」に分類される。第2段階では主にL3が発生し、第3段階でL1、L2が加わる見込みだが、廃棄物処分場の確保が進まなければ第3段階の途中で作業が停滞する恐れがある。クリアランス対象物の再利用や処分の促進に向けた理解の醸成も喫緊の課題だ。

 国内の廃止措置の実績としては、日本初の発電用原子炉「JPDR」(茨城県東海村)が1996年に廃止措置を完了し、原子力事業者、メーカー、ゼネコンなどが解体作業の知見を習得した。これらの経験から、一般廃炉は「既存技術の組み合わせで対応が可能」との評価が定着している。技術的要素よりもプロジェクトマネジメントが成功の鍵を握るというのが関係者の一致した見方だ。

 廃止措置に詳しい東京大学大学院の岡本孝司教授は、「(放射能の)『閉じ込め』さえできれば、一般廃炉はビルの解体と同じだ」と象徴的に語る。その上で、「廃棄物処分場の確保と規制の問題、この2つをクリアすれば廃止措置の完了まで30年もかからない」と指摘する。
 

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 今年2月、九州電力が運開38年目の玄海原子力発電所2号機の廃止を決め、「40年」をにらんだ原子力事業者による存廃判断の動きはほぼ一段落した。長期に及ぶ廃炉作業で費用が上振れする懸念もある中、足元の課題を一つずつ解決しようとする動きも出ている。国や地方、民間の関係者に取材し、本格化する「一般廃炉」が円滑に進んでいくための条件を探った。

電気新聞2019年7月4日

連載「一般廃炉 課題を読み解く」は現在、電気新聞本紙で連載中です。第2回以降は電気新聞本紙または電気新聞デジタル(電子版)でお読みください。