
ことし1月にラスベガスで開催されたCES2026では、急速に拡大する生成AI(人工知能)利用を背景にデータセンター(DC)向け冷却システムや工場などで利用するエッジ推論サーバーなど、AI関連展示が増えた。専門家によるパネルディスカッションも行われ、巨大AIDCにより電力業界が大量高品質な需要への対応に追われる姿などが語られた。本稿では大きく変化する米国のデータセンター向け電力問題をCESでのAI電力議論から分析したい。
◇つなげない・運べない
全米では数百カ所に及ぶ新規AIDCの新設・改築が進み、数カ所では数千万キロワット級の巨大データセンターも建設中だ。例えば、シリコンバレーの一角・パルアルト市では、向こう2年以内に200万キロワットの需要増を見込み、官民一体で対策を進めている。
CESの「エネルギー転換への投資」と題したパネルでは、電力系投資の専門家が「AIDCは単なる新規需要ではなく、電力需要の質を変化させた」ことを強調した。
従来、米国の電力需要は「比較的予測可能」「ピークは時間帯で変わる」「工場や地域単位で需給調整が可能」といった認識があった。一方、AIDCは「24時間年中無休の稼働」「突発的なスパイク(負荷の急変)」「局所的な需要集中」「瞬断などを許さない高い電力品質」を求める。電力会社は、既存グリッドではこうした需要を満たせず、新しい設備投資計画の立案実行を求められている。
新しい設備投資について、シュナイダー・エレクトリック・ベンチャーのアミット・チャトゥルヴェディ氏は、単に発電所をつくることだけでは解決できず、発電・送電全体を見渡し、大量高品質需要を満たせない「弱い部分」に投資を集中させる必要があると指摘した。
米国では、向こう数年で最大5000万キロワットのAI電力需要が予想される一方、設備投資が追いつかない。長期的な発電能力の強化は必要だが、直近の問題は電力があるにも関わらず系統接続ができない点や電力品質を保証できないという「つなげない・運べないことだ」と、複数のパネリストが指摘した。
◇高品質電力の調達
従来、太陽光や風力などのマイクログリッドは災害対策や供給持続性に有効と考えられてきたが、AI需要を満たす「即席の発電・制御単位」として再評価されようとしている。
マイクログリッドの採用で、発電や蓄電能力、制御ソフトにより、グリッドとの併用でコスト削減や系統側の負担軽減などが模索されている。ちなみにメタ社の最新AIDCは、グリッドから独立して大型ガスタービンによる発電施設(メガワット級)を整備した。これはコストアップにつながるものの、電気事業者の設備投資を待てない同社の立場を示す事例といえる。
一方、電力の品質問題は重要課題だ。AIの基盤モデルを作る学習用大型AIDCは、大量のCPU・GPUを使い数週間から数カ月掛けて計算を行う。計算過程では、スパイク(負荷の急変)も発生する。もし電圧変動や瞬断、高調波などが発生すると、計算のやり直しや機器の故障などの重大な問題を引き起こす。
こうした背景からAIデータセンター全体の設計に関与し、UPSから配電、監視ソフトまでを提供する電力品質技術が重要になってきた。これらは総合ソリューションからDVR・AVC・電圧コンディショニング、単体フィルターまで様々で、仏シュナイダー・エレクトリック社や米イートン社、バーティブ社(旧Emerson Network Power)、スイスABB、スペインZGR、日立エナジーなどが米国市場で競争を繰り広げている。
米連邦政府や議会は、AI産業育成のため電力規制の見直しを検討する一方、消費者向け電力料金の上昇に懸念を示している。今後、連邦政府や州政府とDC事業者、機器ベンダー、ベンチャー・キャピタルの四者連携が重要性を帯びる。
次回はAI大手アマゾン・ウェブ・サービスの電力調達を中心に解説したい。
電気新聞2026年2月16日





