[ウクライナショック]識者の見方/吉崎 達彦氏

経済制裁、止めどき難しく


吉崎 達彦氏

 

吉崎 達彦氏
双日総合研究所チーフエコノミスト


 

 欧米を中心に物価が上昇、米国は利上げを表明し、新型コロナウイルスのパンデミックは3年目を迎えた。

 こんな大変な状況で戦争が始まってしまった。どんな副作用が出るか見えない中、経済制裁を強めている。

 経済制裁は武力を使わない外交手段であり、良いことのように思われるかもしれないが、難しい点がいくつかある。効果を見定めにくく、必ず「返り血」も浴びることになる。止めどきも分からない。歴史上、経済制裁は良い結果を生まないことが多い。

 バイデン米大統領の一般教書演説はお手本通りのリアクションだった。米国は軍を出さない。オバマ政権であれ、トランプ政権であれ答えは同じだっただろう。原油価格が上昇しているが、その理由をプーチン大統領のせいにできるのは、バイデン氏にとって助かるのかもしれない。厳しい意見から目をそらすことができる。

 米国内では「アメリカ・ファースト」主義が広がり、ウクライナ情勢は欧州の問題だと反応する人が増えている。「民主主義を守れ」「もっと積極的に関与すべき」などと声を上げていたはずだが、一歩引いた意見が普通に出てきたことが、これまでの米国とは異なる点だ。

(談)


電気新聞2022年3月7日