[ウクライナショック]識者の見方/奈良林 直氏

規制委、安全性迅速判断を


奈良林 直氏

 

奈良林 直氏
東京工業大学特任教授


 

 シェールガス、オイルの増産で、自国のエネルギーを賄うことができる米国に対し、欧州がロシアへのエネルギー依存から脱却するのは難しい。エネルギーのほぼ全てを輸入に頼っている日本も天然ガスと石油の価格上昇で、強い経済的ダメージを受けることになる。国内の各電力はLNGの10%程度をロシア産に頼って、火力発電を行っている。

 コスト負担を抑えながらロシア依存を減らすには、その分、原子力発電を再稼働するしかない。原子力規制委員会は、現時点でのプラントの安全性を迅速に判断すべきだ。可搬型の電源車や注水ポンプなどで重大事故時の冷却機能は維持できる。地下に設置する特定重大事故等対処施設など設置に時間のかかる設備については、稼働しながら審査を進めればよい。

 ロシアがウクライナで原子力発電所の制圧を進めているのは、原子力が安定した電力供給に重要な電源だからだ。これを抑えることで降伏に追い込もうとしている。日本も原子力への軍事的攻撃への備えは必要だが、それは国の役割であって事業者に求めるべきことではない。安全審査の合理化と迅速な再稼働によって、原子力を日本の電力・エネルギー供給の柱に据えていくことが必要だ。

(談)


電気新聞2022年3月16日