[ウクライナショック]識者の見方/松尾 豪氏

上流投資拡大、日本主導で


松尾 豪氏

 

松尾 豪氏
エネルギー経済社会研究所代表


 

 現状の情勢変化を受けて、日本においても安全保障の観点を踏まえたエネルギーベストミックスの在り方を検証する必要がある。第6次エネルギー基本計画は2050年温室効果ガス排出量ネットゼロに向け、野心的なシナリオを相当織り込んでいるが、原子力発電所の活用の在り方も含めて、その見直しを検討すべきだろう。

 米国などによるロシア産ガス・原油の輸入停止が取り沙汰されているが、世界全体の需給バランスをみると、(日本を含め)ロシア産資源の輸入をただちに止めることは輸送制約などの面で現実的ではない。一方で、中長期的には資源・燃料などのロシア依存度を今より下げる対応を取らざるを得ない。

 ただし、上流投資は回復していない。脱炭素の潮流が続く中、金融機関などによる再生可能エネルギー重視の姿勢は変わらない。ロシアは全世界に対して年約1.3億トン(欧州は約1億トン)の天然ガスを輸出しており、全量を代替する供給源は現時点で存在しない。

 供給能力強化には上流投資が必須だ。現在の金融システムでは投資がつきにくいが、社会的に必要とされる分野への投資意欲をどのようにかき立てるか。世界最大級のLNG輸入国である日本が議論を主導するくらいの覚悟を持ち、考えるべきテーマだ。

(談)


電気新聞2022年3月15日