[ウクライナショック]識者の見方/熊野 英生氏

原油高、日本経済の脅威に


熊野 英生氏

 

熊野 英生氏
第一生命経済研究所首席エコノミスト


 

 日本は、対ロシアの経済制裁として、他のG7諸国と連携して、貿易決済の国際銀行間通信協会(SWIFT)から多くのロシアの銀行を締め出すことを決定した。これでドル決済の全てが停止する訳ではないが、ロシアから輸出される鉱物性燃料のかなりの部分が悪影響を受けそうだ。WTIなど原油先物市況は高騰がさらに進むだろう。

 こうした制裁措置はたとえロシアの軍事侵攻が停止し、停戦交渉が始まったとしても継続されそうだ。なぜならばG7諸国は経済制裁の威力を見せつけて、今後、ロシアに対して強い交渉カードにしたいからである。そうすると原油高騰も長期化しそうだ。

 原油高は当面、日本経済の脅威である。岸田政権は、ガソリン・軽油・重油・灯油の4油種に価格補助を実施し、その補助を一層手厚くしようとしている。しかし、電気・ガス代、石油製品の方の価格上昇を抑える仕組みは今のところない。このままだと4月以降の消費者物価は大きく上昇する。

 7月10日には参議院議員選挙が控えている。今後、岸田政権は、電気・ガス代などを含めた価格支援に動くだろう。それでも当面は製造業の仕入コスト高、家計の負担増は避けられないとみる。

(談)


電気新聞2022年3月3日