[ウクライナショック]識者の見方/小山 堅氏

化石燃料投資、日本が主導を


小山 堅氏

 

小山 堅氏
日本エネルギー経済研究所 専務理事・首席研究員


 

 ロシアへの経済制裁を受けてエネルギー価格は一段と上昇したが、市場が制裁の影響を吟味する動きが3月上旬から出ている。ロシアからのエネルギー途絶が起こるかを見極めながら、中国での都市封鎖など他地域での事象を踏まえ、乱高下する状況が続く。

 ロシア産一般炭は、世界全体の輸出量の2割弱を占める。ロシア炭の禁輸で輸入国が代替供給源を探すため追加需要が発生し、石炭価格への上昇圧力は避けられない。

 欧州の石炭輸入はロシア炭が5割近くを占めており、コロンビアや米国、南アフリカなどが代替先として考えられる。日本は豪州やインドネシアが候補だが、いずれも不安定要因がある。世界の石炭市場は近年、コロナ禍の影響や脱炭素化の流れで需要が大きく伸びていない。その中で各国が代替供給源を求めることになる。

 石油や天然ガス価格上昇の逃げ道として、石炭には短期的な関心が集まっていた。禁輸で利用が難しくなると、同時多発的なエネルギー価格の上昇が深刻化し、世界経済にとって様々な問題が出てくる可能性もある。

 G7(先進7カ国)はエネルギー部門を含むロシアへの新規投資の禁止を決めたが、2014年のクリミア併合から欧米の制裁により、新技術の提供や新たな地域への投資は減る方向だった。今回、その方向性が明確な形で出たといえる。

 日本に必要なエネルギー政策は3点ある。安定供給確保のためエネルギーミックスを調整し、省エネルギーや再生可能エネルギー、原子力発電をしっかり進めることが重要。原子力の再稼働は、既設の設備を活用するという観点であらためて注目を集めるだろう。

 化石燃料の需給安定化に向けた適切な投資では、世界のエネルギー政策関係者で共有し、日本がリードしていく必要がある。緊急事態への対応能力向上に関しては、産油国との関係強化に加え、消費国間の分断が起きないように協力体制を構築していくことも重要になる。
(聞き手・編集委員 浜 義人)

 <こやま・けん>1986年早大大学院経済学修了、日本エネルギー経済研究所入所。理事・戦略・産業ユニット総括などを経て、20年6月から現職。専門は国際石油・エネルギー情勢やアジア・太平洋地域のエネルギー市場の分析など。

(談)


電気新聞2022年4月15日