[ウクライナショック]識者の見方/橘川 武郎氏

具体策伴う原子力再評価を


橘川 武郎氏

 

橘川 武郎氏
国際大学副学長


 

 ロシアからのLNG供給が停止する可能性について、電力・ガス業界から懸念の声が聞こえてこない。「サハリン1、2」から日本は出資を引き上げるべきではないが、(欧米と歩調を合わせる必要があり)現実的には難しいのでは。今後中国やインド資本が入る可能性もあるだろう。

 ドイツが、原子力と石炭火力の運転を延長するかも注目している。天然ガスが危機に陥ったとき、原子力と石炭火力に(設備面で)余裕がある国は対処能力が高いはず。その典型がドイツと日本で、緑の党から延長の可能性が出て、日本政府から(積極的に活用する方向性が)出ないのは、政府力の違いだ。

 こういう時のためにベストミックスを進めてきたのだから、政府力を発揮し、再生可能エネルギー開発に拍車を掛け、原子力や石炭火力に対する評価を上げるべき。「原子力の重要性が分かった」という一般論ではなく、具体策を伴う原子力の再評価が必要だ。

 世界で資源価格が高騰する中、日本のインパクトが小さいのは長期契約が効いているから。だが、仕向け地条項が良くないということで、(同条項が外れる)スポット調達を増やしている。この考え方が正しいのか、検証をしないといけないタイミングが来た。

(談)


電気新聞2022年3月8日