[ウクライナショック]識者の見方/石川 和男氏

燃料価格、下げ要素乏しく


石川 和男氏

 

石川 和男氏
社会保障経済研究所代表


 

 ロシアによるウクライナ侵攻により、欧州では天然ガス価格が跳ね上がったが、日本の場合、電力・ガス会社がLNGや石炭を長期契約で調達しているため、悪影響は急に来るのではなく、じわじわとやって来るだろう。

 問題なのは、燃料価格が既に高止まりしている中で、今後さらに上がることはあっても、下がる要素がないことだ。これは痛い。高止まりの局面からじわりじわりと上がることで、エネルギーコスト上昇の痛みに鈍感となり、気付かぬうちに致命的になる“ゆでがえる現象”に陥ることを危惧せずにはいられない。

 電力政策に関しては原子力と石炭火力の重要性を再認識する好機。とりわけ原子力については政府の姿勢をポジティブなものにするチャンスであり、国政判断による再稼働促進など前向きなものへと昇華しなければならない時機だ。都市ガスやLPガス、灯油の場合は(原料に代替がなく)何らかの補助を講じるしかない。

 ロシアからの天然ガス依存が高い欧州では昨年末以降、原子力を再評価する機運が高まっている。脱原子力政策を採るドイツは例外だが、日本もエネルギー安全保障の観点から原子力利用について政治指導力が発揮されるべきだ。

(談)


電気新聞2022年2月28日