JERAが所有する東京、中部エリアの石油火力発電所が全て長期計画停止に入った。設備利用率の低迷や高経年化を理由に、広野火力発電所2号機(60万キロワット)、鹿島火力発電所5、6号機(各100万キロワット)、渥美火力発電所4号機(70万キロワット)の計4基が4月1日から停止した。ただ、容量市場を通じて電源の維持費用を回収できる可能性があり、戦列復帰の余地を残す。

 同社の石油火力(廃止を除く)は、東京エリアに広野1~4号機、鹿島1~6号機、大井火力発電所1~3号機の計13基、中部エリアに渥美3、4号機の2基がある。経済性の悪化などにより2014年4月以降、段階的に長期計画停止してきた。

 石油火力は燃料調達の柔軟性に優れる一方、燃料費が高い。東日本大震災以降はバックアップ電源として安定供給に貢献してきたが、太陽光発電の導入拡大などで出番が激減した。19年度のJERAの重油消費量は前年度比36%減の28万9千キロリットル、原油消費量は同41%減の3万8千キロリットルだった。

 今回停止した4基のうち、広野2号機と鹿島5、6号機は当初、小売電気事業者との売電契約を継続する予定だったが、協議がまとまらなかった。老朽化が進んで保修が困難になったことや、近年の設備利用率低下を踏まえて停止を決めた。

 運開時期は広野2号機が1980年6月、鹿島5号機は74年9月、同6号機は75年6月。2019年度の設備利用率はそれぞれ3.91%、6.79%、5.86%だった。

 渥美4号機は需給上の必要性や経年状況などを総合的に判断し、18年4月の3号機に続いて停止を決めた。運開時期は81年6月。19年度は中部電力の調整力として一部活用されたものの、設備利用率は0.5%だった。

 今回停止した4基は、今後の状況次第で再活用の可能性もあり得る。JERAは「容量市場への応札や卸販売を検討している。(全2基が停止した)渥美火力の廃止も決定していない」と話す。

 容量市場は、4年後に必要となる供給力と予備力を電力広域的運営推進機関(広域機関)が一括調達する仕組みで、7月に初の入札が予定される。落札者には対価が支払われ、燃料費が高く卸電力市場では売電収入を見込めない電源でも、落札できれば維持費用の一部を回収できる。

電気新聞2020年5月19日