豪雨や洪水による水害が頻発・激甚化し、電力設備にも浸水リスクへの対応が重要な課題となっている。変電所が浸水すると、広域停電や復旧の長期化につながる恐れがあるため、防水壁や設備のかさ上げなどの本格的な設備対策が進められている。一方で対象設備が広範囲に及ぶため、すべての対策を短期間で実施することは容易ではない。そこで本格対策を補完する手段として、既設設備にも適用しやすい簡易浸水対策の開発と現場展開が進行中である。今回は、その技術開発と現場検証を通じて得られた知見を紹介する。

 近年、大規模水害が頻発している。浸水によって変電所が供給支障に陥ることを防ぐため、水害リスクへの対応を強化することが求められている。本格的な水密化対策としては、防水壁や水密扉の設置、機器のかさ上げなどが進められているものの、その整備には多大な時間とコストを要する。

 こうした状況を踏まえ、本格対策が完了するまでのリスク低減策として、既設設備にも適用可能な簡易浸水対策の検討を進めてきた。


 対策対象として着目したものは、扉や換気口、下水配管、ケーブルピット、制御盤のケーブル貫通部などの浸水経路となる開口部である。

 これらに対し、防水シートや止水テープ、止水パッキン、流し込み型の止水材などを用いた対策を比較・検討した。評価に当たっては止水性能だけでなく、施工性やコスト、緊急時の適用しやすさといった現場運用の観点も重視した。

 その結果、完全な止水は難しい場合でも、浸水の進行を遅らせることで建物内部への流入や制御機器への影響を軽減、停電範囲の縮小や復旧時間の短縮につながる可能性が確認された。

 ◇現場で見えてきた課題と工夫

 基礎試験で有効性を確認した後、実際の変電設備を用いて施工検証を実施した。現場での検証を通じて、机上検討や試験設備だけでは把握できない課題や改善点が明らかとなった。

 例えば、ケーブルピットなど制御ケーブルが密集する箇所では施工空間が限られており、止水材を均一に充填することが難しいことが分かった。そこで、ケーブル間に緩衝材を配置し、充填材の保持性を高めるなど工夫を取り入れた。

 こうした改善は、現場担当者の経験や創意工夫によって生みだされたものであり、浸水対策の実効性向上に寄与している。

 現場検証を通じて、浸水対策は単に対策材を選定するだけではなく、設備構造や施工条件に応じて適切な工法を組み合わせることが重要であることをあらためて確認した。

 ◇継続的な改善でレジリエンスを高める

 水害リスクは地域や設備の立地条件によって大きく異なる。そのため、対策を一律に適用するのではなく、設備ごとの特性や浸水想定に応じて最適な対策を選択することが重要である。

 また、一部の止水材は施工後の撤去や設備更新時の作業に手間を要する。対策の選定には浸水対策の効果だけでなく、将来的な保守性や運用性を考慮する必要がある。このため、現場で得られた知見を継続的に共有しながら、施工方法や対策材料の改良が進められている。

 気候変動の影響により、水害リスクは今後さらに高まることが予想される。電力の安定供給を支えるためには、防水壁などの本格的な設備対策と、現場で迅速に実施できる簡易対策を組み合わせた多層的な備えが欠かせない。

 高分子材料を活用した簡易防水対策は、電力設備のレジリエンスを向上させる有効な手段の一つである。今後も技術開発と現場検証を重ねながら、水害に強い電力設備の実現を目指していく。

電気新聞2026年9月7日