データを活用して新たな価値を見つけ出そうという試みが、電力をはじめとする様々な業界で本格化してきた。技術の進化によって、膨大なデータを収集・分析するハードルは下がった。サービスの差別化やビジネスモデルの転換に生かせるかが、企業の将来を占う試金石となる。「データセントリックな社会」の実現へと大きく近づく中、企業の変革を後押しする「アドバイザー」の役目を担うのがインテルだ。昨年11月に就任した鈴木国正社長と、張磊執行役員・インダストリー事業本部長のインタビューを中心に、最近の取り組みをまとめた。
新事業創出へ手応え/電力業界のDX進展
インテル社長・鈴木国正氏に聞く
――デジタル・トランスフォーメーション(DX)に関する日本企業の取り組みについて、どう評価しているか。
「日本企業は、設備投資自体は米国よりも多い。ただ、DXに向けてのICT投資となると、米国や中国と比べて(スピードが)遅いと言われている。一般論として言えることは、コスト削減が目的なら会社は動くが、新ビジネス創出となると時間がかかる。ICT投資の中身をみても、情報インフラの改修が多い。今後はDXを加速する流れになると思うが、まだ過去の資産のメンテナンスにコストをかけている」
「私は、この状況を前向きに捉えている。これからICT投資が増え、コスト削減やビジネス機会の発掘、新ビジネスの創出につながっていくのは間違いない。シリコンバレーの中心にいて、誰もが使う半導体製品を提供する我々が、価値あるアドバイザーになることが重要だ」
◇変革の一翼担う
――インテルの役割は、具体的にどう変わっていくか。
「インテルのコアバリューは従来、信頼性のある高性能なシリコンを供給することだった。この役割は不変で、必要な投資を継続することは会社の背負った宿命だ。今後はそれに加え、データを使ってDXをどう進めるかを顧客やパートナーと一緒に考えていきたい。社会の変革の一翼を担う『トラステッド・アドバイザー』になりたいと思っている」
「シリコンという重要な製品を扱っているがゆえに分かることも多いし、インテルの立ち位置が中立だからこそ信頼を得やすいという面もある。製品を売り込むわけでなく、既存のビジネスが伸び悩む中で何を仕掛けるかを提案し、その結果として製品市場の拡大につながる。就任以来、肌で感じているところだ」