東京商品取引所と日本卸電力取引所(JEPX)は、電力の先物と現物(スポット)の取引を連携させる新たなサービスを8月末にスタートさせる。電力先物の売買がリスク回避を目的とした「ヘッジ取引」であることを会計上証明しやすいほか、クリアリング(清算)の仕組みによって相手先の破綻などによる信用リスクを遮断できる。将来の電力を固定価格で取引する実質的な先渡し取引として、活用が広がるか注目される。


 東商取とJEPXは2024年10月に現物・先物連携サービス「JJ―Link」を始めた。「第1フェーズ」として、利用者の申告を受けてJEPXがスポット市場の約定データを東商取に連携し、先物のポジション(建玉)と照合するサービスを提供してきた。

 ◇「見た目」の懸念

 こうしたサービスが生まれた背景には、電気事業者の会計上の問題がある。先物取引によって会計年度をまたぐ建玉を保有していると、期末時点の時価評価で見た目上の損益が大きく増減することが懸念されていた。

 実際には先物取引の対象期間となったタイミングで建玉が決済され、スポットなど現物取引の収支と通算して損益が決まる。こうした考え方に対応して会計処理を行う「ヘッジ会計」という手法もあるが、この手法を適用するには先物取引の目的が投機ではなくヘッジだと証明する必要があった。

 第1フェーズもこの証明に役立つが、先物と現物はそれぞれの市場で発注し、東商取へ申告するという手間が掛かっていた。8月31日に開始予定の第2フェーズでは、東商取に先物を発注すればその内容を基にJEPXスポット市場への入札まで可能だ。「ワンストップ」の仕組みで利便性を高める。

 ◇実質「先渡し」に

 もう一つの大きな利点は、先物市場がもつ「清算機能」を活用できること。先物取引は売り手・買い手双方の合意で成立するが、契約は間に立つ清算機関と結ぶ。このため、一方が経営破綻に陥った場合なども、取引の不履行で損失を被る信用リスクは回避できる。

 規模が大きい電力の取引では受け渡し期間が長く、先になるほど信用リスクが重要になる。リスクに応じて異なる価格を設定することも考えられるが、大手電力は社内外の販売価格を同等とする「内外無差別」のルールとの整合性が問題視されかねない。

 清算機能を活用することで、内外無差別で取引相手の信用リスクを遮断しつつ、将来の電力を取引するという実質的な先渡し取引が実現する。

 一方で、取引の成立には多様な売り手・買い手の参加が欠かせない。サービスの普及に向けては、先渡し取引が中長期の供給力確保義務を履行する手段として位置付けられるかも一つの焦点になりそうだ。

電気新聞2026年7月16日