【ニューヨーク=荻原悠】カナダ・米ニューヨーク州間を600キロメートル以上にわたり結ぶ高圧直流送電線(HVDC)の建設工事がヤマ場を迎えている。再生可能エネルギーの積極利用を掲げる大需要地と売電を伸ばしたいカナダの発電事業者のニーズが合致した形だ。米資産運用大手ブラックストーンをはじめ、事業資金の全額を民間資本で賄う国際間連系線事業としても注目される。日立エナジーは自励式の交直変換技術「HVDCライト」を用いた変換所の建設工事をマンハッタンを望むニューヨーク市郊外で進めている。

ニューヨーク市街地近傍に立つCHPEの交直変換所(右下)

 HVDC「シャンプレーン・ハドソン・パワー・エクスプレス(CHPE)」はカナダ・ケベック州から水力発電による電気をニューヨーク州に送る。送電容量は125万キロワットで、ニューヨーク州の約100万世帯分の使用電力に当たるという。2026年中の稼働を目指している。

 米国で大規模な送電線を敷設する場合、連邦や州など複数の許認可を得る必要があり、各地域の電力会社など利害関係者の調整が煩雑になる傾向がある。CHPEではケベック州から来る電力全てをニューヨークISO(独立系統運用者)の卸電力市場に売電する。単一州内で完結するプロジェクトとなり、合意形成をしやすかったという。

 ニューヨーク州のエネルギー・環境政策も事業を後押しした。同州は30年までに州内電力の70%を再エネで賄う目標を掲げ、安定した再エネの調達を急いでいた。大きな需要を背景に発電事業者ハイドロ・ケベックはCHPEとの間に40年間の長期送電権使用契約を結んでいる。CHPEはハイドロ・ケベックから得る送電線利用料で建設コストを回収する見込みだ。

 ニューヨークのように電力需要が増える都市部では、交流系統に接続する発電機を増やし需要を賄う方法もある。こうした手法は短絡電流を増やして系統安定性を高める半面、遮断器を全て交換する必要もあるため電力会社の負担が増える。HVDCを用いることで余計な設備投資をせずに必要な電力を確保できるメリットもある。

電気新聞2026年3月5日