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 ○中長期市場の制度上の論点

 以下、残る論点のうち主なものについて記載したい。供給力確保義務を課す以上、細部の制度設計は特に小売電気事業者の経営に大きな影響を与えうるため、十分な検討が必要と考えている。

 ▼信用リスクの扱い

 中小新電力の一部は相対卸契約の与信審査を通過できていないため、中長期市場への電源調達の依存度が高まると考えられる。個々の市場参加者・取引所間の信用リスクの負担方法・管理の在り方は、特にこれら新電力の事業継続性に影響を与える可能性があり、慎重な検討を要すると考えている。

 ▼環境コストの扱い

 26年度から本格化する排出量取引に伴い発電事業者が負担するコスト転嫁の是非は、将来の卸価格を大きく左右する。この扱いについては、スポット市場をはじめ、主要な卸市場での扱いを早急に検討する必要がある。既に一部の発電事業者が卸取引において、排出量取引や化石燃料賦課金による追加費用の精算を行う旨を明らかにしており、今後、中長期市場への影響が注目される。

 ▼燃料費調整・エリア間値差の扱い

 異なる燃種構成を有する複数の発電事業者が、同一の市場エリアに卸販売する場合、約定取引に適用する燃料費調整の算定は非常に複雑となる。また売り手と買い手が異なるエリア間で約定し、実需給時に会社間連系線の制約により、エリア間値差が発生した場合の扱いもあらかじめ定めておく必要がある。これらの措置は約定後の価格の予見可能性に直接影響するため、十分に吟味する必要がある。

 ▼LNG長期契約との関係

 供給力確保義務と中長期市場については、LNG長期契約を促進するための施策となりうる点が注目されていた。しかし、実需給3年前以降の供給力確保義務では長期契約を促進するには不十分との意見があるため、この点について、最後に言及しておきたい。

 日本の主要な発電事業者は現在、40年頃までのLNG長期契約を締結している。長期からスポットに至る契約数量・期間の組成に当たり、発電事業者は電力需要の長期想定、原子力・再エネ等の発電量見通し、環境負荷に対する国の施策等の重要な要素の見通しと、その不確実性を勘案する必要がある。小売電気事業者にとっても、これらの要素の見通しが立たない状況で、発電事業者との間で5年・10年等の長期にわたる卸契約を締結することには、おのずと限界がある。エネルギーセキュリティーの観点からLNG長期契約を促進するには、異なる施策によるべきだと考えている。

電気新聞2025年11月10日

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