電力・エネルギー業界の皆さまにとって、電気自動車(EV)の普及は単なる環境政策の産物として映るかもしれない。しかし、その背後には産業革命以来の歴史的必然性と現代企業が直面する構造変化がある。MobiSaviは、EVを資源として、無駄なく使い尽くし、次世代に手渡す社会づくりを目指している。この連載では「EVによるサーキュラーエコノミー」という新たな経済モデルを描く予定だが、その前段として、なぜモビリティがEVに収束せざるを得ないのかを明らかにする。

◇産業革命の論理が示すEVの必然性
アメリカの経済思想家ジェレミー・リフキンは、産業革命を「エネルギー・モビリティ・情報」の三要素が同期的に革新することで起こる社会変革として定義した。
第1次産業革命では、石炭を動力転換する蒸気機関が生まれ、蒸気機関車が大量輸送を実現した。グーテンベルクの活版印刷による知識流通が都市化と工業化を支え、人々は農村から都市へ移住し、工業化社会が誕生した。
第2次産業革命では、石油を動力転換する内燃機関が誕生し、T型フォードが大量生産により自動車を「富裕層のもの」から「大衆の足」へ変えた。電信・電話が世界をリアルタイムでつなぎ、自動車は「自由と豊かさの象徴」として生活様式そのものを変革した。
そして第3次産業革命では、分散型の再生可能エネルギーとインターネット・AI(人工知能)技術が融合し、電力の動力転換として必然的に電動化が進む。
EVは単なる環境対応車ではなく、自動運転やスマートグリッドとの連携を通じて「フィジカルレイヤーのAI」として産業全体を進化させ、移動とエネルギーが一体化した持続可能な社会の実現を目指しているように見える。
◇経営論理から見た転換の必然性
歴史的必然性に加え、産業構造の現実もEV転換を要請している。脱炭素政策や地域間の産業競争も確実に存在する要因だが、これらは変化の加速要因であって本質的な駆動力ではない。従来の自動車産業は付加価値の天井に直面し、内燃機関車の改良余地は物理的限界に達した。
注目すべきは、内燃機関技術の参入障壁の高さである。精密加工や材料工学など高度な技術蓄積を要する内燃機関は、日米欧以外では産業化が困難だった。この技術的参入障壁が、現在まで続く日米欧の伝統的な自動車メーカーの隆盛を支えてきた。
しかし、電動化は状況を一変させる。モーターやバッテリー技術は内燃機関ほど複雑な機械加工技術を必要とせず、多くの国・地域で開発が可能になる。この技術的民主化により、テスラやBYDなど新興企業の参入が相次いでいる。自動車メーカーが次なる成長を求めるなら、自動運転やエネルギーマネジメントといった新領域への展開が不可欠であり、これらはEVプラットホームでのみ実現可能である。
◇エネルギー業界への戦略的示唆
この変化は電力業界にとって単なる需要の増加にとどまらない。EVが本格普及すれば、移動体そのものが分散型エネルギー資源となり、既存の電力システムの概念を根底から覆すことになる。V2Gにより、EVは電力の消費者から供給者へと役割を変え、再生可能エネルギーの変動調整や災害時の電源として社会インフラの価値を創出する。
歴史の大きな潮流と産業の経営論理、この両面から見て、モビリティのEV化は避けられない必然である。重要なのは、この変化を機会として捉え、新たな価値創造の仕組みを構築することである。
次回は、EVが「循環する資源」として機能する経済モデルについて論じる。
◇第3次産業革命への道筋
リフキンが洞察したように、産業革命はエネルギー・モビリティ・情報の三要素が同時変革するときに起こる。EVの資源循環は、まさにその三要素を統合する革命的仕組みである。
脱炭素、資源偏在、AI時代の合理性という三重の必然に突き動かされ、EVは循環経済の新時代を切り開く。それは第3次産業革命を加速させる、まったく新しい社会基盤の誕生である。
電気新聞2025年10月27日





