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○電気の供給力
電気の供給力の確保には、発電所の(3)電源容量の確保と、貯められない電気の供給安定性のための(4)調整機能の確保が必要となる。
(3)電源容量の確保としては、リソースアデカシーとして発電設備の将来を見据えた容量と、アベイラビリティー(稼働可能な状態)の確保となる。もちろん再エネとバッテリーによる供給力が十分確保されるまでは、前述の燃料のエネルギーセキュリティーと安定化のための数量柔軟性がカギとなる。
日本ではカーボンニュートラル(CN)目標の発表以来、火力発電の廃止が進み、同時に発電所収益の予見性が低下していることから新規投資が見送られており、アデカシー(必要供給力の確保)が不足する事態となっている。既存の発電設備の拡張とともに新規電源への投資が必要だが、その投資インセンティブに対する具体的な方向性が見えていない。
電力システムが自由化される前は、電力会社が需要想定と設備形成を行ってきたが、自由化後は(教科書的には)市場機能と価格シグナルで、電源投資が行われることになった。しかし政府のCN目標の発表以来、電源構成の中心である火力発電への投資が停滞し、老朽化した発電所の廃止と重なって、リソースアデカシー確保が困難になりつつある。
そこで考えられる判断は、市場機能を停止して計画経済に戻り、垂直統合型の電力会社が料金と設備投資を判断して、金融機関が一般担保融資を再開するのか、あるいは市場機能を活かしてスポット市場の流動性とアクセスを増加し価格発見機能を強化させ、相対取引やOTC取引の透明性そして金融取引によるヘッジと事業収支の安定化を図ることで、電源投資インセンティブを図るのか、という選択である。
大型電源投資は大手電力やJパワーが投資の役割を担ってきたが、昨今では資金ポジションが良好ではなく、政策誘導をしても個社の財務負担による電源投資の再構築はやや難しい。大型火力発電は、CN目標やエネルギー基本計画と齟齬(そご)がある中の巨額な投資は難しく、どちらかと言えば再エネの方が変動性はあるものの、発電コストが低廉で小規模であり、投資が進む可能性がある。
火力発電も再エネも電気が貯められない性質は同じなため、常に周波数を一定化するための調整力が必要だが、再エネはさらに変動電源であり、再エネの導入を拡大するには、以下に挙げる調整力とフレキシビリティーという2つの(4)調整機能の確保が必要になる。
ここでは1つの定義として、フレキシビリティーをゲートクローズ前のエネルギー(kWh)の需給バランスのための上げ・下げ、調整力をゲートクローズ後の周波数調整のためのアンシラリーサービスとする。前者は売り手と買い手が売買する取引で、後者は一般送配電事業者が調達する取引となる。つまりフレキシビリティーと調整力がバランシング(需給運用)をサポートする行動を取ることで価値を提供し、対価を得る仕組みになっている。
電気ではさまざまなリソースが調整機能を提供しているが、フレキシビリティーを提供するケースと調整力を提供するケースでリソースが異なる。例えば冷凍設備を使ったデマンドレスポンスでは、市場価格が高いときに30分単位でエネルギー消費を削減(下げDR)してフレキシビリティーを提供し、バッテリーを使ったアンシラリーサービスでは需給調整市場の価格が高いときに高速で充放電して調整力を提供している。
しかしながら今までの商習慣として、消費者には電気を一定限度までいつでもどの量でも使えるという数量柔軟性(つまり好きな量を一定範囲内で同じ料金で買える)というオプション価値があるため、システム全体のバランスを取るために、消費者の反対側でリソースが調整する仕組みとなっている。
この電気の消費者側の数量柔軟性は、前述のように消費者がオプションを買って保有していることと同義であり、その柔軟性オプションの行使(好きな時に好きな量を使う権利)に伴ってバランシングが不安定化するため、その不安定性を打ち消すフレキシビリティーと調整力に価値が生まれている。
つまり、(4)電気の調整機能が不可欠なのは、電気の貯められないフィジカルな性質に由来する部分と、需要家の電気の使用契約が数量柔軟性というオプションを持っている部分があるからである。その結果が、燃料の(2)調達の安定化のための数量柔軟性のニーズにまで発展しているといえる。





