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 報告では、分散型電源の挙動が影響を及ぼしたことも示された。1メガワット未満の電源はREEの再エネ中給(CECRE)の監視対象外であり、電源出力はREEから直接監視できず、出力低下や停止は需要の増加や潮流の変化として現れるに過ぎない。スペインは自家消費の太陽光発電を「2030年までに19ギガワット」とする目標を掲げており、2024年末で8.5ギガワットの容量とされる。本停電時には、初期に起こった三度の上位系統電源の脱落よりも前の時点で、REEから見えない1メガワット未満の電源や自家消費において約1ギガワットの出力低下・停止があったとされる。また、下位系統からの無効電力の流入も指摘されている。

 分散型電源や自家消費(Behind the Meter)に関する適切な把握と系統連系技術要件の再確認も必要である。我が国では、軽負荷期昼間を中心に、火力発電機の並列台数減少や下位系統からの無効電力流入の増加により、基幹系統の電圧が上昇する傾向にある。同期発電機の進相運転や送電線停止などの運用対策や設備対策が行われているが、これらの運用対策には同期安定性や信頼度の低下のリスクがあり、インバータ型電源による電圧・無効電力調整の強化等、他の対策をより活用することを検討していく必要がある。

 設備からの能力提供や、系統事故時等の連系設備の挙動を迅速に把握・分析し、系統安定性維持に必要な能力を適切に確保するためには、常時の系統各所の電圧・周波数等の時刻同期のとれた高頻度計測(例えばPMU<同期フェーザ計測装置>による計測)が有用である。再エネ大量導入等を踏まえ、電力中央研究所は一般送配電事業者等と協同で、PMUの設置と活用による運用高度化の検討を進めている。検討の一例として、Behind the Meter発電機を含む、エリアごとの系統慣性を把握するシステムの開発が挙げられる。

 インバータ型電源の下位系統への連系増加と同期電源の系統連系減少により、電力システムは安定運用面で質的変化が生じつつある。発電と需要・送配電の各リソースが電気物理の法則の下、一体となって挙動し、適正な周波数と電圧の維持が不可欠である「生身の電力システム」の安定性確保に向けて、技術的対策等の検討が重要である。またこうした新たな対策コストを適切に評価し、各電源を電力システムに受け入れるための統合コストに反映していく必要がある。

※1 電力システムのコモンセンス7「有効電力と無効電力」(本紙2024年12月4日)参照

電気新聞2025年9月22日

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