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 本年4月28日、太陽光や風力など再生可能エネルギーを積極的に導入しているスペインやポルトガルを含むイベリア半島全域で大規模停電(以下、本停電)が発生し、6月中旬にスペイン政府とスペインの送電系統運用者REEからそれぞれ報告書(以下、報告)が公表された。本稿は本停電の原因と対策の解説を目的とするものではないが、インバータ型電源の系統連系が増加し同期発電機の連系が減少するスペインでの大停電に至る状況と対策は、同様に太陽光発電などの系統連系が増加する我が国の電力システムの安定性維持を検討する際の貴重なレッスンとなる。

 大規模停電は、電力需要に対し供給力が大幅に不足する(=周波数が維持できない)状況を通常思い浮かべるが、本停電では事前の供給力は足りていた。報告では、停電の第一の要因は「電力系統での無効電力(※1)のアンバランスによる系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止」とされた。本停電の特異な点は、適切な電圧制御ができず大停電が引き起こされたことである。

 電力システム改革の検証等において、供給力と調整力の確保は主要テーマとして議論されてきた。中長期には計画的な電源等の開発・更新、容量確保と燃料調達が、運用段階では調整力の確保とメリットオーダー運用(電源の起動・停止を含む)などがあるが、いずれもエネルギーや発電出力(有効電力)の話である。

 一方、電圧・無効電力等の調整能力確保の問題は、系統連系する電源が同期発電機が主体で、インバータ型電源が少ない頃はあまり表面化しなかったが、本停電により、系統安定化に必要な電圧調整能力等の確保の重要性が改めて示された。電圧が適正に維持されないと発電機やお客さま設備が正常に機能しないおそれがあり、最悪のケースでは系統解列する。電気事業法において、一般送配電事業者は電圧及び周波数の維持に努めなければならない旨が規定されている所以(ゆえん)である。

 同期発電機は端子電圧が一定となるよう、界磁電流の制御により無効電力の供給・吸収を調整する機能(AVR、動的電圧調整能力)を有する。一方、インバータ型電源は、現状は電源出力が一定力率となるよう有効電力出力に応じて無効電力の供給・吸収を調整する制御(APFR)であり、系統電圧に応じた無効電力の調整がなされない。

 本停電当日は軽負荷期の晴天であり、火力等の動的電圧調整能力を持つ電源の並列台数は停電直前(12時30分ごろ)は11台と今年最小であり、前日のコンバインドサイクル電源のトラブルで減ったが、REEは問題ないと判断していた。また、停電直前に系統連系電源の約7割を占める太陽光や風力発電などはインバータの定力率運用であり、電圧調整能力は限定的であった。

 広域的系統動揺は本停電の重要な背景要因ではあるが、系統動揺への対応等に伴う電圧状況の悪化に対し、動的電圧調整能力を持つリソースが不足し、系統運用者は火力発電機の追加並列を決定したが、起動時間から停電発生には間に合わなかった。